この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
ビオチンとは?
ビオチンはビタミンB群に属する水溶性のビタミンで、体内の酵素を活性化し、たんぱく質、脂質、炭水化物の材料であるアミノ酸、脂肪酸、糖の合成や、エネルギー産生などを助けます。水やアルコールに溶けやすく、熱によって壊れやすい性質があります。
また、ビオチンはアミノ酸の代謝やコラーゲンの生成に関わっており、皮膚や粘膜、爪、髪の健康維持に欠かせない栄養素で、脱毛や皮膚炎に対する治療効果が研究されてきました。
成人のビオチン摂取目安量は50mcg/日とされており、食品からの摂取もそれほど困難ではないため一般的に不足することはありません。
ビオチンを多く含む食品には以下のようなものがあります。
肉類 … 鶏レバー、豚レバー、牛レバー
魚介類 … かれい、あさり、ししゃも
野菜類 …ドライトマト、モロヘイヤ、枝豆
ナッツ類 … バターピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ひまわり種
果実類 … ドライ苺、アボカド、ドライマンゴー
きのこ類 … まいたけ、白きくらげ、しいたけ
しかし、不規則な生活や悪い食習慣・喫煙・飲酒・抗生物質の服用によってビオチンが不足するとアトピー性皮膚炎や脱毛、食欲不振、うつなどの症状が現れます。
ビオチンの育毛・美肌・疲労回復効果
ビオチンはアミノ酸の代謝をはじめ、コラーゲンの生成にも関わっているため、育毛や美肌に重要な役割を果たしています。また、糖の代謝を助けるため、疲労回復にも効果的です。さらに抗炎症作用により、脱毛・薄毛・アトピー性皮膚炎・ニキビの治療に有効であるとされています。
育毛効果
髪の主成分であるケラチンの合成を助ける働きをします。ケラチンが円滑に生成されることで、艶のある美しい髪を生み出すことができます。また、コラーゲンを生成し、太く健康な髪を育てます。 さらに、ビオチンは血行を促進するため、頭皮に栄養が運ばれやすくなり、丈夫な抜けにくい髪を維持することができます。
他にも、アトピーやにきびの治療に利用される抗炎症作用があるため、アレルギー反応が原因の脱毛を防ぐことができます。
美肌効果
ビオチンにはコラーゲン生成促進、代謝促進などの効果が期待され、美肌効果だけでなく、アトピー性皮膚炎の治療にも用いられています。また、ビオチンには皮膚細胞のターンオーバーサイクルを早める働きがあります。皮膚細胞のターンオーバーが正常になることで、健康的な皮膚を作り出しやすくなります。
さらに、ビオチンにはメラニン抑制の働きがあるため、美白にも効果が期待できます。美肌と美白のケアを同時に行えるビオチンは、素肌美人になるためには欠かせない栄養分と言えます。
疲労回復効果
糖代謝の補酵素として糖新生*をサポートするため、筋肉痛や疲労感を感じにくい体を作ります。ビオチンが不足するとエネルギーの産生が不足し、疲労感に襲われると考えられています。また、疲れのもととなる乳酸を分解してくれる働きもあるため、筋肉痛を早く回復させたい時にもピッタリです。
*糖新生 … 乳酸が肝臓に運ばれ、ピルビン酸へと変えられ、さらにオキザロ酢酸へと変化して、再びブドウ糖へと再合成される過程。「糖のリサイクル」とも言う。
ビオチンで育毛、白髪改善
ビオチンはアミノ酸の代謝に関わり、髪の主成分であるケラチンの合成を助ける働きをします。ケラチンが円滑に生成されることで、艶のある美しい髪を生み出すことができます。
また、ビオチンには頭皮の血流を改善し、皮膚を強くする働きがあります。 頭皮環境が良くなることで、頭皮の炎症が緩和され、頭を悩ますフケや痒みの症状が抑えられます。そうすると、髪の根本まで栄養が行き渡りやすくなり、太くて丈夫な抜けにくい髪を維持することができるのです。
頭皮の血行が悪いと髪に色を付ける色素細胞(メラノサイト)に栄養が十分に行き渡らないため、髪に色が付かず白髪の原因にもなってしまいます。肌と違って白髪は、表面からの保湿やケアでは改善できません。
ビオチンにはこのメラノサイトを活性化させる働きがあると言われています。髪が白くなるメカニズムは、何らかの原因でメラノサイトが機能しなくなることによって起こるため、ビオチンを摂ることで白髪予防に役立つと考えられています。
ビオチンでまつ育
ビオチンには血流を良くする、細胞の新陳代謝を活発にする、炎症を抑えるなどの効果があります。この細胞の新陳代謝を活発にする効果が、肌や髪の毛だけでなく、まつ毛にも効果があるのです。
細胞の新陳代謝が促進されると、まつ毛の土台となる皮膚は常に新しい綺麗な状態を保つことができるため、まつ毛を増やし、濃く長くする効果が期待できます。また、ビオチンは血流を良くし毛細血管の働きを促進するので、まつ毛の根元にも栄養が届きやすくなり、まつ毛が伸びやすくなります。さらに、髪の毛の艶も良くなります。
個人差はありますが、まつ毛の毛周期*は30~90日と髪の毛と比べて短いため、ケアをすればその分効果が得られやすい部位と言えます。
*毛周期 … 毛の生え変わるサイクル。髪の毛の毛周期は2~6年。
ビオチンで強くきれいな爪に
爪はカルシウムから作られていると思っている方もいるかもしれませんが、実はそうではなく、ケラチンというタンパク質から作られています。そして、その爪の主成分であるケラチンの合成に必要なコラーゲンの生成を促進する効果などで注目を浴びているのがビオチンなのです。
ビオチンは競走馬のひづめを丈夫にするときにも使われおり、もちろん人にも有効なので、ネイル業界でも注目されています。
実際、脆弱な爪をもつ女性を被験者とする臨床試験において、6か月間にわたる2,500mcg/日のビオチン投与の結果、69~91%で自覚的な症状の改善が報告されています。
また別の臨床試験では、6か月間にわたる2,500mcg/日のビオチン投与の結果、爪の厚みが25%増加し、縦裂が減少したことが報告されています。
ビオチンは皮膚や粘膜、爪、髪の健康維持に深く関わっているビタミンであるため、不足すると以下のような症状、病気の原因になります。
ビオチン不足になると
ビオチンは皮膚や粘膜、爪、髪の健康維持に深く関わっているビタミンであるため、不足すると以下のような症状、病気の原因になります。
- アトピー性皮膚炎・乾癬・掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などの皮膚炎
- 脱毛・薄毛・白髪
- 食欲不振
- うつ傾向
- 疲労感
- 筋肉痛
- 吐き気
尚、ビオチンの不足には先天性のものと医原性のものに大別されます。
先天性ビオチン代謝異常
▪ビオチニダーゼ欠損症
ビオチニダーゼとは、経口摂取したビオチンを腸管からの吸収する際に重要な役割を果たす酵素です。また、ビオチニダーゼにはホロカルボキシラーゼ*¹の分解産物からビオチンを分離する機能もあります。そのため、ビオチニダーゼ欠損症では、ビオチンの吸収障害と再利用障害の両方によって欠乏症が引き起こされます。
*¹ホロカルボキシラーゼ … 金属原子や補酵素と結合して、活性をもつようになったカルボキシラーゼ
▪ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症
ホロカルボキシラーゼ合成酵素は、アポカルボキシラーゼ*²にビオチンを取り込む反応を触媒する酵素です。この酵素の欠損は4つのカルボキシラーゼ*³の活性がすべて減少し、先に述べたようなビオチン不足による各種症状が引き起こされます。
*²アポカルボキシラーゼ … 金属原子や補酵素と結合していない不活性のカルボキシラーゼ
*³カルボキシラーゼ … ブドウ糖のリサイクル(糖代謝)、脂肪酸の合成、アミノ酸の代謝に関わる酵素
医原性ビオチン欠乏症
ビオチンは多くの食品に含まれており、またビオチンを産生する腸内細菌が存在するため、欠乏症になることは稀です。しかし、日本の特殊ミルクはビオチンの含有量がきわめて少ないため、ミルクアレルギー治療用ミルクなどのみで栄養を摂取しているとビオチン欠乏症になります。
ビオチン代謝に影響を与える因子としては、以下のようなものがあり、注意が必要です。
- 体内の蓄積量の減少
- 偏食などでの食物からの摂取量の減少
- 胃腸炎などによる腸管細菌叢からの産生障害
- 抗菌薬、サルファ剤の服用
- 抗てんかん剤(フェニトイン、プリミドン、カルバマゼピン)の長期服用
ビオチン不足を引き起こす生活習慣
【喫煙】
喫煙によって体内に取り込まれるニコチンを代謝するために、ビオチンが大量に失われてしまうことが知られています。 「タバコをやめたら、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)が治った!」という話も聞かれます。 百害あって一利なしの喫煙の習慣はやめるにこしたことはありません。
【飲酒】
アルコールの分解・代謝にもビオチンが大量に消費されます。 また、お酒を飲むと血管が拡張するので、ビオチン不足が原因の皮膚炎を患っている場合は、かゆみの症状が強くなります。
【便秘】
ビオチンは、腸内まで到達したときに初めて腸内細菌の働きによって栄養素となります。 腸内の活動が便秘で滞ってしまうと、腸内細菌の数が足りなくなり、慢性的なビオチン不足に陥ってしまいます。
【生卵の過剰摂取】
良質なタンパク源として知られる卵白も、過剰に摂取するとビオチン不足の原因になる可能性があります。卵白に含まれるアビジンという成分は生で食べることによってビオチンと結合し、ビオチンを体外へ排出してしまい、ビオチン不足を引き起こします。ただし、1日に2個程度の生卵ならほとんど影響は無いと言われています。また、卵白を加熱すればビオチンと結合しにくいアビジンに変形するので、加熱調理して食べればより安心です。
ビオチン療法とは
ビオチン療法とは、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、アトピー性皮膚炎・ニキビといった皮膚の疾患に対して行う治療法です。
必要なものはとてもシンプルで、『ビオチン』+『善玉菌』+『ビタミンC』になります。これらを同時に摂取することにより、ビオチンの効果を最大限に引き出すことができます。
ビオチン療法自体は新しいものではなく、医療現場においては古くから急性・慢性湿疹や脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)、小児湿疹、ニキビ治療などに使われている治療法です。
また、花粉症にも効果がみられるため、「免疫系統にも関わり免疫異常を改善してアレルギーを起こりにくくする効果もあるのではないか」と言われています。
ビオチン療法は、主に以下のような疾患に効果があります。
- 掌蹠膿疱症
- 急性・慢性湿疹(アトピー性皮膚炎など)
- 尋常性乾癬
- ニキビ
- 酒さ
- 花粉症 など
ビオチンの摂取量
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、ビオチンの1日の摂取の目安量を18歳以上の男女とも50mcgとしています。水溶性ビタミンのため、過剰に摂取しても尿として排出されやすく、過剰摂取による健康被害が報告されていないことから、上限摂取量は設定されていません。
ビオチンを豊富に含む食材には以下のようなものがあります。
食品 | 含有量(mg/100g) | 食品目安量(可食部) | 目安量(可食部)中の成分含有量 |
---|---|---|---|
まがれい | 23.9 mcg | 1切れ100g(85g) | 20.3 mcg |
まいわし | 15.0 mcg | 2尾160g(80g) | 12.0 mcg |
まかじき | 13.1 mcg | 1切れ100g | 13.1 mcg |
うなぎ(蒲焼き) | 10.4 mcg | 1串100g | 10.4 mcg |
バターピーナッツ | 95.6 mcg | 20粒16g | 15.2 mcg |
ヘーゼルナッツ(フライ) | 81.8 mcg | 10粒15g | 12.2 mcg |
ひまわり(フライ) | 80.1 mcg | 大さじ2杯18g | 14.4 mcg |
アーモンド(フライ) | 61.6 mcg | 10粒14g | 8.6 mcg |
鶏レバー | 232.4 mcg | 1個40g | 93 mcg |
豚レバー | 79.6 mcg | 1切れ30g | 23.9 mcg |
牛レバー | 76.1 mcg | 1切れ40g | 30.4 mcg |
納豆 | 18.2 mcg | 1パック50g | 9.1 mcg |
まいたけ(ゆで) | 22.4 mcg | 1パック75g(75g) | 16.8 mcg |
魚介類や豆類、きのこ類はビオチンの含有量も多く食事として量が取れるものも多くあります。種実類は一度に摂取できる量は限られますが、ビオチンの含有量が非常に豊富なのでこちらもビオチン摂取に優れた食品群です。
動物のレバーにもビオチンは非常に多く含まれますが、豚や鶏のレバーはビタミンAも非常に多いので摂りすぎには注意が必要です。摂取するならビタミンAが両者に比べて控えめな牛レバーがいいでしょう。
サプリメントでのビオチン摂取
ビオチンの1日の摂取の目安量50mcgを食品から摂取することはそれほど困難ではないため、サプリメント摂取の必要性を疑問視するかもしれません。
確かに食品から50mcgのビオチンを摂取することは容易かもしれません。しかし、この摂取目安量は、あくまでも生活習慣に問題のない一般の人を対象としています。
アトピーなどの皮膚疾患、薄毛や白髪、爪に問題のある人、まつ毛の育毛などに対してはこの摂取量は十分ではありません。
現に円形脱毛症と脂漏性皮膚炎の臨床試験では5,000mcg/日を3か月間、爪に関する臨床試験では2,500mcg/日を6か月間投与することで良好な結果が得られています。
ビオチンは水溶性ビタミンのため、過剰に摂取しても尿として排出されやすく、2年間にわたる5,000mcg/日の摂取においても副作用は認められていません。
臨床試験の結果が示す通り、実際にビオチンの効果を実感するには1日2,500~5,000mcgの摂取が必要と言えます。これだけの量を食品から摂取するのはビオチンの含有量が高い鶏のレバーでさえ1kg以上摂取する必要があり、現実的ではありません。
また、ビオチンを単体で摂取するよりも、ビタミンCやビタミンB-6などと一緒に摂取することでその効果を最大限に引き出すことができます。これらの成分が含まれているサプリメントであれば、同時に摂取することも容易になります。さらに、ビオチンのような水溶性ビタミンは摂取してから2時間程度で体外に排出されてしまうと言われているため、一度に大量に摂取するよりも、少量・適量をこまめに摂取することが望ましいとされています。サプリメントであればこまめの摂取も簡単に行えます。
このような理由から、ビオチンの効果を最大限に引きだし、実感するにはサプリメントの摂取が最も合理的で現実的と言えます。
ビオチンサプリメント選びのポイント
まずは含有量を確認してください。実際に効果を実感するには1日2,500~5,000mcgのビオチン摂取が必要になります。そのため、1日分の摂取量が最低でも2,500mcgのものを選びましょう。
次に、他の成分も確認してください。海外製のビオチンサプリメントでは1日分の含有量が10,000mcgというものも少なくありませんが、多くはビオチンの効果を高める他の成分が含まれていません。ビオチンの効果を最大限に引き出すビタミンCやビタミンB-6、セレンといった成分が含まれていることを確認してください。
ビオチンの働きを高めるこれらの成分が配合されているビオチンサプリメントであれば、より一層の効果が期待できます。
【ビオチンの効果を高める成分が配合されたサプリメント】
1日分のビオチン含有量が2,500mcg以上で、ビタミンC、ビタミンB-6などのビオチンの効果を最大限に引き出す成分が入ったサプリメントに「ドクターズチョイス ビオチン5000プラス」があります。
「ドクターズチョイス ビオチン5000プラス」はビオチン含有量が5,000mcg、ビタミンCやビタミンB-6だけでなく、ビオチンと一緒に摂取すると良いとされる27種もの成分が配合されています。
- 臨床実験に基づき、育毛や爪の強化、アトピーなどの改善に効果的な「ビオチン」を5,000mcg配合。
- ビタミンCやビタミンB-6など、ビオチンの働きを高める27種の成分を配合し、ビオチンの効果を最大限に引き出します。
まとめ
一般的に、ビオチンはいろいろな食品に含まれているうえに、腸内細菌によっても合成されるため、通常の食生活では欠乏することはないと考えられます。
しかし、遺伝的に体内でビオチンを再生・再利用するための酵素や、ビオチンを活性化するための酵素が欠損している場合は、欠乏症状が現れます。喫煙や飲酒などの生活習慣においてもビオチンは大量に消費されるため注意が必要です。また、便秘などで腸内の活動が滞ると、ビオチンを生み出す腸内細菌の数が足りなくなり、ビオチン不足に陥ってしまいます。
ビオチンには脱毛・薄毛・白髪改善、まつ毛の育毛、美肌、爪を丈夫にするといった効果がありますが、通常の食生活から摂取する量では効果を実感するには不十分です。効果を実感するには、臨床試験が示すように、1日2,500~5,000mcgのビオチン摂取が必要になります。これだけの量を食品から摂取するのは現実的ではなく、サプリメントでの摂取が合理的になります。
サプリメントであれば、排出されやすいビオチンをこまめに補給することも容易です。また、ビオチンの効果を最大限に引き出すには、ビタミンCやビタミンB-6、セレンといった成分も重要で、これらの成分が配合されたサプリメントであれば別々に摂取する手間も省け、より一層の効果が期待できます。
ビオチンは水溶性のビタミンで過剰摂取しても、全て汗や尿として体外に出てしまうため、体内蓄積による副作用の心配がほとんどありません。積極的にビオチンを摂取し、育毛・白髪改善、まつ毛の育毛、美肌そして爪にその効果を実感してみましょう。