この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
カンジタ膣炎とは?
カンジタ膣炎は、カンジタ菌と呼ばれる真菌の1種が膣内で異常増殖することによって引き起こされる膣炎です。カンジタ、膣カンジタ症、性器カンジタ症としても知られています。
成人女性の5人に1人はカンジタ膣炎を経験済みというデータがあるほど罹患率は高く、ほとんどの女性は一生に一度は経験すると言われています。また、カンジタ膣炎を経験したことがある女性のうち約7割は再発しているというデータもあり、一度発症してしまうと治癒してからも再発を繰り返しやすい病気でもあります。
原因菌となるカンジタ菌は膣内に限らず皮膚や口腔内、消化器官内にも存在する常在菌です。何らかの原因により免疫力が低下したり、膣内の微生物のバランス(膣内フローラ)が崩れるとカンジタ菌が異常増殖し、カンジタ膣炎を引き起こしてしまいます。
カンジタ膣炎は自然治癒するのか?
カンジタ膣炎は原因菌が常在菌であり、ほとんどの場合で症状が深刻化することもないため自然治癒を待つことは可能す。
ただし、妊娠中にカンジタ膣炎を発症した場合、カンジタ菌による羊水感染や産道感染を通して、新生児の口腔粘膜に感染してしまうことがあるため産婦人科での早期治療が必須となります。妊娠していなくても、かゆみが激しく日常生活に支障をきたしている場合などは処方薬を使用することですぐに症状をやわらげることもできます。
妊娠していない場合はカンジタ膣炎を自然治癒させることに深刻なリスクは伴いませんが、ストレスや生活習慣(喫煙、飲酒、偏食など)で症状が悪化したり、なかなか治らない場合もあります。そのため自然治癒を待つ場合でも生活習慣を改めるなどの対策を取りましょう。
ただし、カンジタ膣炎が発症したのが初めての場合は、症状が似ている病気も存在するため注意が必要です。自然治癒を待つ前に、まずは自己の症状とカンジタ膣炎の症状を照らし合わせていきましょう。
カンジタ膣炎の症状
カンジタ膣炎の症状には下記があります。
- 強いかゆみ
- 白い固形状のおりもの
- 発疹
- 灼熱感
最も特徴的となるのは酒かす状、ヨーグルト状、カッテージチーズ状とも言われる白い固形状のおりものですが、外陰部の強いかゆみも大きな特徴のひとつとなります。次項では、カンジタ膣炎のようにおりものの形状の変化やかゆみを症状に含む疾患を紹介していきます。
症状が似ている疾患
カンジタ膣炎と症状が似ている病気には産婦人科などで適切な治療を行わなければ症状が深刻化するものもあります。特にデリケートゾーンのトラブルが初めてである場合、自己診断は危険です。下記の病気と症状を確認して、ご自身の症状と当てはまる場合はすぐに産婦人科を受診しましょう。
病名 | カンジタ膣炎 | 細菌性膣炎 | トリコモナス膣炎 | 性器ヘルペス |
---|---|---|---|---|
かゆみ | 強いかゆみ | 軽度~強い かゆみ |
強いかゆみ | 痛がゆい |
おりもの | ・白色 ・固形状 |
・灰色 ・水っぽい ・量が多い |
・黄~黄緑色 ・泡立っている ・量が多い |
変化なし |
におい | 変化なし | 魚が腐ったにおい | 強い悪臭 | 変化なし |
その他 | ・発疹 ・灼熱感 |
刺激感 | ・刺激感 ・灼熱感 |
・水ぶくれ ・ただれ |
原因 | カンジタ菌 (真菌) |
細菌 | トリコモナス (原生生物) |
ヘルペスウイルス |
膣の自浄作用
閉経前の健康な女性の膣内は「膣の自浄作用」によってカンジタ菌などの微生物が異常繁殖できないようになっています。この膣の自浄作用で大切な役割を担っているのがデーデルライン桿菌(かんきん)と呼ばれる乳酸菌です。
デーデルライン桿菌は代謝の際に乳酸を産生し膣内を酸性に保つ作用がありますが、多くの微生物はこの状態では繁殖することができないため膣は健康な状態を保つことができます。
ところが何らかの原因でデーデルライン桿菌よりもその他の微生物が優勢になってしまうと膣の自浄作用が正常にはたらかずカンジタ膣炎などの膣感染症を発症してしまいます。膣の自浄作用を弱らせてしまう要因としては抗生物質の使用や免疫力の低下、ホルモンバランスの変化、そしてデリケートゾーンの高温多湿状態などがあげられます。
膣の自浄作用を正常に保つことはカンジタ膣炎を自然治癒し、さらに再発予防する上で大変重要となります。
ヨーグルトはカンジタ膣炎の自然治癒に効果あり?
カンジタ膣炎を自然治癒させたい女性の間では「カンジタ膣炎を発症している時に膣にヨーグルトを塗る」という民間療法が知られています。これは前項で紹介したように乳酸菌が膣の自浄作用において重要なはたらきを担っているために知られるようになったものだと考えられます。
実際には、膣にヨーグルトを塗ることでカンジタ膣炎を自然治癒することはできません。理由としては下記があげられます。
- ヨーグルトに含まれる乳酸菌とデーデルライン桿菌は異なる
- 多くのヨーグルトには添加物が含まれている
- 糖分はカンジタ菌の栄養源になる
上記のように、膣に直接ヨーグルトを塗ることは乳酸菌による利点よりもリスクの方が大きく、また糖分が含まれているものにおいては逆効果となることが分かります。
ただし、ヨーグルトを経口摂取する場合には消化器官、とくに腸内の微生物バランス(腸内フローラ)を整えることにつながり、これは間接的に膣の微生物バランスを整えることにもなります。後の「カンジタ膣炎を自然治癒させるための食生活」でも紹介しますが、ヨーグルトを含む発酵食品には乳酸菌が多く含まれているため微生物に対する免疫力を強化することができます。
カンジタ膣炎を自然治癒させるにはカンジタ菌の生態と自己の免疫システムを理解し、正しい知識を持って取り組むことが重要となります。
カンジタ菌の生態
カンジタ膣炎を自然治癒させるにはカンジタ菌の生態を理解することが重要となります。
真菌の1種であるカンジタ菌は酵母と菌糸という2つの形態をとります。
状況によってカンジタ菌は発育形態を変える。 | |
酵母形発育 | 菌糸形発育 |
カンジタ菌は30℃以下の環境では丸い酵母の形を取って発育しますが、ヒトの体内では先が細く尖った菌糸の形で発育します。菌糸状態のカンジタ菌が膣や口腔内の粘膜からその奥の組織に侵入するとヒトの身体は免疫反応として白血球を送り込みますが、この状態になると組織は炎症を起こしカンジタ膣炎などの感染症の症状が引き起こされます。
とは言え、カンジタ菌は口腔内、消化管、膣内の常在菌でもあり、実はヒトの免役系を刺激し鍛えるという重要な役割を担っています。異常増殖した場合のみカンジタ口腔炎やカンジタ膣炎などの疾患が現れるため、身体全体でカンジタ菌を減らし、適正な量に保つことがカンジタ膣炎の自然治癒や予防につながります。
カンジタ膣炎を自然治癒させるための口腔ケア
「カンジタ膣炎」と聞くと、治療は膣のケアを想像すると思いますが、自然治癒を目指すには身体全体でカンジタ菌を減らす必要があります。特に口腔は腸などの消化器官や膣に比べ物理的にカンジタ菌を取り除きやすい部位となるため、口腔ケアを取り入れることは有効です。下記を実践することで口腔内のカンジタ菌を最小限に抑えましょう。
カンジタ菌を取り除くために
- 1日2回の歯磨きと1日1回のフロス
- 歯磨きの際に専用のブラシで舌を優しく磨く
(その際、舌を傷つけてしまうと逆効果のため注意する)
善玉菌を増やすために
- 禁煙
- 口呼吸をやめ鼻呼吸を意識する
- よく噛む
口腔と消化器官は繋がっていますから、口腔ケアと消化器官のケアを同時に行えば相乗効果が期待できます。消化器官は口腔のように洗浄することはできませんが、食事でケアすることができます。次項の「カンジタ膣炎を自然治癒させるための食生活」では、消化器官内でカンジタ菌を減らし、善玉菌を増やすことができる食材を紹介していきます。
カンジタ膣炎を自然治癒させるための食生活
カンジタ膣炎を自然治癒させるにはカンジタ菌が好む食材を避け、カンジタ菌が嫌う食材や膣の自浄作用を含む免疫系に良い食材を積極的に摂取することが重要となります。
× カンジタ菌が好む食材
糖分
カンジタ菌の栄養源となり増殖を加速させる
甲殻類(グルコサミン)
カンジタ菌の菌糸形発育を誘導し、病原性を強くする
ゼラチン(コラーゲン)
カンジタ菌の菌糸形発育を誘導し、病原性を強くする
〇 カンジタ菌が嫌う食材
ハーブや生野菜
香りが強くポリフェノールの多いものはカンジタ菌の菌糸形発育を抑制する
黒にんにく
カンジタ炎症の原因である真菌を軽減する効果が、臨床実験でも証明
〇 免疫系に良い食材
発酵食品
消化器官や膣内の善玉菌を増やす
キノコ類
抗体の産生を促進することで消化器官の免疫作用を強化する
上記の食材を積極的に摂取して消化器官内でカンジタ菌が繁殖できない状態を作り出し、身体全体でカンジタ菌の繁殖を抑制することが、カンジタ膣炎の自然治癒と再発予防対策につながります。
おすすめのサプリメント
食材と同じように、サプリメントは消化器官から直接カンジタ菌にはたらきかけることができます。しかも、有効成分を高濃度で摂取できることからカンジタ膣炎の自然治癒促進に大変有効となっています。
カンジタ膣炎に有効なサプリメントとしては乳酸菌やハーブなどの植物成分があげられますが、カンジタ膣炎専用に開発・ブレンドされたものが販売されています。
ドクターズチョイス フェミプロバイオ
膣の自浄作用において重要な役割を担うデーデルライン桿菌と同じ乳酸菌4種を配合。これらの乳酸菌によって膣の自浄作用が強化されれば、より早くカンジタ膣炎を自然治癒できます。
ドクターズチョイス ファンガクリア
カンジタ炎症の原因である真菌を軽減する効果が、臨床実験でも認められた黒にんにくや下記の天然成分をはじめカンジタ膣炎の自然治癒に有効な成分をブレンド。
抗生物質を使わずに天然成分でカンジタ菌を抑制することができます。善玉菌を減らさずにカンジタ菌のみを減らすことができるため、自身の免疫力を強化してカンジタ膣炎を自然治癒したい方におすすめのサプリメントとなります。
これらは薬品ではなくサプリメントであるため、カンジタ膣炎が自然治癒した後も継続して摂取し、カンジタ膣炎の再発予防にも役立てることもできます。
身体の内側からカンジタ菌を撃退し、さらに免疫力を高めることでデリケートゾーンのトラブルのない快適な毎日をお送りください。
まとめ
カンジタ膣炎はカンジタ菌という常在菌が膣内で異常増殖した時に引き起こされる膣感染症です。
カンジタ菌は30℃以下の環境では酵母菌として自然界のいたるところに存在しますが、ヒトの体内では病原性のある菌糸状に変化し粘膜などの組織に侵入します。
強いかゆみや固形状のおりものなど不快な症状を引き起こしますが、自己の免疫力で自然治癒させることも可能です。
カンジタ膣炎を自然治癒するには、免疫力を高めながらカンジタ菌を抑制することが重要となります。
最も重要となる「膣の自浄作用」には、デーデルライン桿菌と呼ばれる乳酸菌が膣内を酸性に保つことによってカンジタ菌をはじめとする悪玉菌の繁殖を抑制するはたらきがあります。
デーデルライン桿菌と同じ乳酸菌を経口摂取することで、この膣の自浄作用を高めることができます。
また、口腔内や消化器官を含め身体全体のカンジタ菌を減らすことは膣内のカンジタ菌を減らすことにもつながります。
口腔ケアなどで物理的にカンジタ菌を取り除くこともできますが、食事やサプリメントで身体の内側からはたらきかけることも有効となります。
カンジタ菌は多くの植物成分、特に香り成分を嫌うため、生野菜やハーブを積極的に摂取しましょう。
強いかゆみや異常なおりものなど不快な症状を引き起こすカンジタ膣炎ですが、発症の原因や改善・予防方法を理解すれば自然治癒や再発予防も可能となります。
風邪を引かないように手洗い・うがいをするのと同じように、カンジタ膣炎にならないように食事などの生活習慣を見直していくことで快適な毎日を目指しましょう。