【ドクタースコッツ監修】 個人によっては繰り返してしまうこともあるカポジ水痘様発疹。発症の仕組みを理解し対策を行えば予防は可能です。
この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
カポジ水痘様発疹とは?
カポジ水痘様発疹(カポジすいとうようほっしん)はウイルスによる疱疹が広範囲に現れる皮膚感染症です。
基礎疾患として皮膚に炎症のある患者がその患部からウイルスに感染することで発症します。
カポジ水痘様発疹を引き起こしてしまう基礎疾患とウイルスには様々な組み合わせがありますが、アトピー性皮膚炎を基礎疾患にヘルペスウイルスに感染してしまう症例がほとんどとなっています。
基礎疾患の例 | 原因ウイルスの例 |
---|---|
アトピー性皮膚炎 | ヘルペスウイルス |
熱傷(やけど) | コクサッキーウイルス |
ダリエ病(毛包性角化異常症) | ワクチニアウイルス |
基礎疾患により肌のバリア機能が弱っていること、さらにかゆみや疼きから掻いてしまうことにより症状の範囲が急速に拡大してしまうことが特徴となります。
皮膚が薄くアトピー性皮膚炎を発症しやすい0~5歳に多く発症しますが、条件が揃えばどの年齢層でも発症します。近年では成人のアトピー性皮膚炎患者が増えているため、成人でもカポジ水痘様発疹の発症率が高くなってきています。
この記事では、アトピー性皮膚炎とヘルペスウイルスを原因とするカポジ水痘様発疹に焦点を当て、症状や原因、治療法などを紹介していきます。
カポジ水痘様発疹の症状
カポジ水痘様発疹は下記のように症状が進行します。
カポジ水痘様発疹の症状の進行
・アトピー性皮膚炎により傷ついた皮膚からヘルペスウイルスが侵入
・皮膚が赤く腫れる
・中央にへこみのある小さな水ぶくれが大量にできる
・個々の水ぶくれはやがてかさぶたになる
・3週間ほどで治癒する
*初感染では症状が重症化し発熱やリンパ節の腫れがともなうことも
患部は顔面や上半身などアトピー性皮膚炎の起こりやすい部位となり、痛みや疼き、かゆみをともなうこともあります。
基礎疾患により肌のバリア機能が下がっているため、触ってしまうと患部が急速に拡大してしまいます。
カポジ水痘様発疹の原因
「カポジ水痘様発疹とは?」でも述べたとおり、カポジ水痘様発疹はアトピー性皮膚炎の患部から経皮的にヘルペスウイルスに感染してしまうことで発症します。
ヘルペスウイルスには様々な種類がありますが、カポジ水痘様発疹を引き起こしてしまうのは単純ヘルペスウイルス1型と2型となります。
ヘルペスウイルスの種類 | 病気 |
---|---|
水痘・帯状疱疹ウイルス | 水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹 |
単純ヘルペスウイルス1型 | 口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、ヘルペス性角膜炎、カポジ水痘様発疹、性器ヘルペス、ヘルペス性脳炎 |
単純ヘルペスウイルス2型 | 性器ヘルペス、臀部ヘルペス、ヘルペス性髄膜炎、カポジ水痘様発疹 |
カポジ水痘様発疹を通してヘルペスウイルスに初感染する場合が多くなりますが、必ずしも初感染のみに起こるとは限らないことが分かっています。
カポジ水痘様発疹患者
- ヘルペスウイルス初感染(他人からの感染)…34%
- ヘルペスウイルス感染経験者…66%
- カポジ水痘様発疹の再発…13.2%
- 口唇ヘルペスなどのヘルペス感染症経験者…9.4%
ヘルペスウイルスによる感染症は水ぶくれなどの症状が一度治癒した後もウイルス自体は神経節に潜伏し続け、感染者の免疫力が低下すると再活性化することが知られています。
近年では成人におけるアトピー性皮膚炎の重症患者が増えていることもともなって、成人のカポジ水痘様発疹の発症・再発の割合が増えています。
症状が似ている皮膚炎
カポジ水痘様発疹と症状が似ている病気は複数あり、長年の経験がある皮膚科医でも目視だけでは判別が難しい場合があります。
皮膚炎 | カポジ水痘様発疹 | 帯状疱疹 | アトピー性皮膚炎 | とびひ |
---|---|---|---|---|
症状 | ウイルス感染部位から経皮的に発疹や水ぶくれが広がる | 胴体の神経を伝って帯状に発疹や水ぶくれが広がる | かゆみをともなう赤みのある湿疹が広がる | 虫刺されやあせもを掻いた傷から細菌が感染し、水ぶくれや膿をもつ湿疹が広がる |
部位 | 顔面や上半身 | 胸、背中、腹部 | 顔面や上半身 | 全身 |
原因 | ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型・2型) | ヘルぺスウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス) | アレルギー物質 | 細菌 |
治療法 | 内服抗ウイルス薬(重症の場合は点滴) | 内服・外用抗ウイルス薬 | ステロイド | 内服・外用抗菌薬、ステロイド |
症状が似ている皮膚炎に注意しなければならないのは、治療法が全く異なる場合があるためです。
カポジ水痘様発疹と帯状疱疹はいずれもヘルペスウイルスを原因としているため、誤診があったとしてもそれほど問題にはなりませんが、アトピー性皮膚炎やとびひと誤診された場合はステロイドが処方されてしまい症状が悪化してしまう場合があるため注意が必要となります。
なぜステロイドはカポジ水痘様発疹を悪化させるの?
ステロイドはアレルギー物質に対する免疫の過剰反応による炎症を抑える効果があります。虫刺されやアトピー性皮膚炎などアレルギー反応による炎症に有効な治療方法です。
一方でカポジ水痘様発疹ではウイルス感染が水ぶくれなどの症状の原因となっています。「カポジ水痘様発疹の原因」でも述べた通り、単純ヘルペスウイルスは初感染後に症状が治癒した後も感染者の神経節に潜伏し、風邪やストレスなどで免疫力が低下するたびに活性化します。そのためカポジ水痘様発疹をアトピー性皮膚炎などと誤診してステロイドを使用してしまうと、免疫力が抑制されるためにウイルスが強力となり症状が悪化してしまう危険性が高くなります。
誤診を防ぐためにも口唇ヘルペスなどヘルペスウイルスによる感染症を経験したことがあったり、家族に感染者がいる場合は必ず皮膚科医に伝えましょう。
またアトピー性皮膚炎やとびひと診断された上でカポジ水痘様発疹を疑う場合は精密検査を要請するか、他の皮膚科医にセカンドオピニオンを求めるなどしましょう。
カポジ水痘様発疹になったら注意すること
カポジ水痘様発疹では患部がかさぶたとなりはがれ落ちるまではウイルスが排出されている危険性があるため、患部をひろげてしまったり家族に感染させてしまわないように注意する必要があります。
カポジ水痘様発疹を含めヘルペスウイルスを原因とする感染症の自己感染で一番注意しなければいけない部位は眼球となります。
眼球は粘膜が薄いためウイルスが簡単に細胞に侵入しやすく、角膜ヘルペスという失明の恐れもある重症の感染症に発展してしまう恐れがあります。
カポジ水痘様発疹においては顔面全体に症状がひろがってしまうこともあるため、特に角膜ヘルペスの危険性が高まってしまいます。下記の点に注意しましょう。
自己感染を防ぐための注意点
・患部に触らない
・患部に触ったらすぐに手を洗う
・顔面に抗ウイルス軟膏を使用する際は、まず清潔な手で目の周囲に軟膏を塗布してから他の部位に塗布する
・症状が完全に治癒するまではコンタクトレンズの使用は控える
・入浴後は患部とその他の部位で別々のタオルを使用する
カポジ水痘様発疹では他者、特に同居している家族への感染にも注意しなければなりません。全身に症状が及んでいる場合には他者への感染を防ぐことが大変難しくなり、また処方箋だけでは治療が不十分であるために入院が必要になることもあります。皮膚科を受診したうえで処方箋のみで治療を行うことになった場合、下記の点に注意して他者への感染を防ぎましょう。
他者への感染を防ぐための注意点
・患部に触らない
・患部に触ったらすぐに手を洗う
・他者との接触を避ける(特にヘルペスウイルスに抵抗力のない0~5歳児)
・タオルや寝具、食器などを共有しない
・他者への感染の危険性がなくなるまで学校や仕事は休む
・バスケットボールやサッカーなどの接触スポーツに参加しない
カポジ水痘様発疹方の治療法
カポジ水痘様発疹の治療法は症状の度合いで変わってきます。
軽症(患部が一部に限られている場合)
抗ウイルス薬の内服(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなど)
重症(患部が広範囲にわたる場合
入院治療
抗ウイルス薬(アシクロビル)の点滴
カポジ水痘様発疹発症中は肌のバリア機能が非常に弱く細菌への抵抗力がなくなるため、二次的に細菌感染を重複してしまう場合があります。その場合には抗菌薬を処方されますが、細菌感染がなくても予防として処方される場合もあります。
カポジ水痘様発疹の予防方法
「カポジ水痘様発疹の原因」でも紹介した通り、カポジ水痘様発疹はアトピー性皮膚炎を発症している間に患部に単純ヘルペスウイルスが接触することで感染します。
アトピー性皮膚炎は慢性化し繰り返しやすいことで知られていますが、ヘルペスウイルスは一度治癒した後も神経節に潜伏し免疫力が低下する度に再活性化する特性があるため、人によってはカポジ水痘様発疹を繰り返してしまうこともあります。
カポジ水痘様発疹を予防するには、アトピー性皮膚炎の発症予防とヘルペスウイルスの抑制を同時に行うことが大切となります。後続の「アトピー性皮膚炎を予防するには」と「ヘルペスウイルスを抑制するには」でその方法を詳しく紹介していきます。
アトピー性皮膚炎を予防するには
アトピー性皮膚炎を予防するには下記を実行しましょう。
① アレルギー物質を取り除く
原因となるアレルギー物質が分かっている場合はそれを取り除く努力をしましょう。アレルギー物質が空気中にある場合は掃除や換気、洗濯をこまめにする他、定期的にクーラーや換気扇のフィルターも交換しましょう。(アレルギー物質の例: ダニ、ペットの毛、ほこり、花粉)
② 肌を清潔に保つ
汗やほこり、雑菌などの汚れは肌への刺激となり炎症やかゆみを引き起こします。刺激の少ない洗浄料をしっかり泡立て、素手でやさしく洗い、ぬるま湯で十分に洗い流しましょう。
③ 肌を保湿する
乾燥は肌のバリア機能を低下させ刺激に弱い状態にします。入浴後や外出の前後など1日数回保湿剤を使用することで肌のうるおいを保ちます。皮脂が少ない部位や衣類との摩擦が起こりやすい部位は乾燥しやすいために特に気を付けましょう。
④ 肌に良い栄養素を摂取する
肌に良い栄養素として有名なものにビオチンやビタミンCなどがあります。ビオチンは比較的簡単に摂取でき腸内細菌でも生成されるビタミンであるため通常欠乏することはあまりありません。しかしアトピー性皮膚炎の患者では欠乏しやすく、さらにビオチンの欠乏状態が続くとアトピー性皮膚炎になりやすいという悪循環もあるため食品やサプリメントで積極的に摂取しましょう。(ビオチンを多く含む食品の例: レバー、ししゃも、あさり、しいたけ、まいたけ、ピーナッツ)
⑤ 腸に良い栄養素を摂取する
アトピー性皮膚炎を繰り返してしまっている場合は乳酸菌を摂取して腸粘膜を強化することが重要となります。2002年の日本消化器病学会の発表によると、15人の重症のアトピー性皮膚炎患者のうち13人で大腸に慢性的な炎症があることが分かりました。腸の粘膜に炎症があると通常は未消化物として腸内に留まるべき物質が血液に吸収され、それが異物として免疫反応の対象となりアトピー性皮膚炎を引き起こすと考えられています。腸内環境を整えることはビオチンなどの肌に良い栄養素の吸収率を上げることにも繋がり相乗効果も期待できます。(乳酸菌を多く含む食品の例: ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、味噌)
ヘルペスウイルスを抑制するには
ヘルペスウイルスを抑制するには下記を実行しましょう。
① 免疫力を強化する
ヘルペスウイルスは感染者の免疫力が弱くなると再活性化するため、十分な睡眠をとる、健康的な食事をとるなど基本的なことに気を付けて免疫力を強化することが有効となります。
② カフェインの摂取量を抑える
カフェインを過剰摂取すると抗炎症作用により免疫力が低下してヘルペスウイルスが活性化してしまうことが分かっています。カフェインの覚醒作用を利用して睡眠不足になったり、身体にたまり続ける疲労に気が付けない状態自体も免疫力を低下させる要因となることからもカフェインの摂取は控えましょう。
③ 紫外線対策を行う
日焼けは肌のバリア機能を弱めてしまいます。皮膚表面にはランゲルハンス細胞という免疫細胞がありますが、このランゲルハンス細胞は紫外線に弱くダメージを受け免疫機能を弱めてしまいます。特に唇は皮膚も薄く紫外線のダメージを受けやすい部位でもあるため日焼け止め効果のあるリップクリームを塗るなど対策を行いましょう。
④ アルギニンの摂取量を抑え、リシンを積極的に摂取する
アミノ酸の1種であるアルギニンはヘルペスウイルスの栄養となりウイルスが増殖しやすい状態を作ることが分かっています。ただしアルギニンは人体に必要な栄養素でもあるため、アルギニン不足も問題となります。アメリカの臨床実験ではアルギニンと構造が似ているアミノ酸であるリシンをアルギニンよりも多く摂取することでヘルペスウイルスを原因とする感染症を予防することができると証明しています。リシンは肌を構成するアミノ酸でもあるために肌のバリア機能を高めるという意味でも大変有効な栄養素となります。
おすすめのサプリメント
カポジ水痘様発疹の予防にはアトピー性皮膚炎の予防・改善とヘルペスウイルスの抑制の両方が効果的となります。「アトピー性皮膚炎を予防するには」や「ヘルペスウイルスを抑制するには」で紹介したような予防対策と併せてサプリメントを活用することをおすすめします。
ドクターズチョイス ビオチン療法セット
「アトピー性皮膚炎を予防するには」でも紹介したとおり、肌に良い栄養素と腸に良い栄養素を摂取することはアトピー性皮膚炎の予防において大変有効となります。実はビオチン、ビタミンC、そして善玉菌(乳酸菌)を組み合わせて摂取することはアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の民間療法としてよく知られており、「ビオチン療法」とも呼ばれています。ドクターズチョイスのビオチン療法セットはビオチン5000プラスとフローラケアプラスの2つのサプリメントのセットとなります。
ビオチン5000プラスにはビオチン療法に不可欠であるビオチンとビタミンCだけではなくビタミンB-6、ビタミンE、パントテン酸をはじめビオチンの効果を最大限に引き出す栄養素を多数配合しています。ビオチンは臨床実験に基づき5,000mcgと高配合となっています。
フローラケアプラスは腸内フローラケア専用の善玉菌サプリメントです。腸の粘膜を強化しアトピー性皮膚炎との関連性がある腸の炎症を鎮めるだけではなく、ビオチンの吸収を助けるのに有効な善玉菌も配合されています。1粒に4種のビフィズス菌と8種の乳酸菌の合計500億個の善玉菌、そしてそれら善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維も配合されています。
ドクターズチョイス リシン+プラス
カポジ水痘様発疹をはじめ、ヘルペスウイルスを原因とする病気ではリシンが有効であることが分かっています。
臨床実験ではリシンを1日1,000mg以上摂取することでヘルペスウイルスを原因とする病気の発症率を下げられることが証明されていますが、ドクターズチョイスのリシン+プラスは3粒でこの量を手軽に摂取することができます。さらにヘルペスウイルス対策専用に亜鉛、ビタミンC、バイオフラボノイドも配合されているため相乗効果により免疫力が強化され、さらに皮膚の修復を早める効果も期待できます。
カポジ水痘様発疹はアトピー性皮膚炎で肌のバリア機能が下がっている時にヘルペスウイルスが活性化してしまうと発症します。これらのサプリメントでアトピー性皮膚炎とヘルペスウイルスのそれぞれをコントロールし、カポジ水痘様発疹を2度と繰り返さなくて良い日々を手に入れましょう。
まとめ
カポジ水痘様発疹はアトピー性皮膚炎を基礎疾患に、ヘルペスウイルスに経皮的に感染することで引き起こされる皮膚疾患です。
水ぶくれがかさぶたとなり、新しい皮膚ができるまでは3週間以上かかりますが、その期間は感染力があるために患部をひろげてしまったり家族に感染させてしまわないように細心の注意を払う必要があります。患部が広範囲にわたり重症となる場合には入院治療が必要となることもあります。
治療法には抗ヘルペスウイルス薬が使用されますが、予防対策としては基礎疾患となるアトピー性皮膚炎と水ぶくれなどの症状の原因となるヘルペスウイルスを抑制することが重要となります。アレルギー物質を取り除くなど環境を整え、さらに肌を刺激から守る他にもサプリメントを活用して身体の内側から対策を行うことも有効となります。
一度発症してしまうと生活に大きな支障を与えてしまう疾患であるからこそ、再発のリスクがある場合は予防対策を万全に行いましょう。