【ドクタースコッツ監修】加齢黄斑変性の根治療法はまだ開発の段階です。だからこそ、自宅でも予防・改善対策を行うことが大変重要となります。
この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
加齢黄斑変性とは?
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)とは、眼球の黄斑という組織が加齢により変性してしまう病気です。
黄斑は網膜の中心部にあたり、物を見る上で大変重要な役割を担っています。そのため、加齢黄斑変性を発症するとゆがみや視力の低下など様々な視覚障害が引き起こされます。
発病のリスクは50歳以上で高くなり、特に男性では女性の3倍の発病率となっています。
高齢化の進む日本では加齢黄斑変性の患者数は増加傾向にあり、視覚障害の原因の第4位にもあげられています。
残念ながら治療薬の開発は遅れており、決め手となる治療法はまだ確立されていないのが現状です。
加齢黄斑変性の症状
加齢黄斑変性を患うと下記のような症状が現れます。
加齢黄斑変性の症状
- ものが歪んで見える
- 視野の中心が暗い/欠けている
- 視力が低下する
通常の見え方 | 加齢黄斑変性の見え方 |
---|---|
多くの場合片側の眼で加齢黄斑変性を発症しますが、反対側の眼で視界が補われるために異常に気付くのが遅れてしまうことがあります。加齢黄斑変性のセルフチェックを行う場合は必ず片目ずつ見え方をチェックしましょう。
加齢黄斑変性の種類
加齢黄斑変性は黄斑の変性の仕方によって2つの型に分けられます。どちらの型でも、黄斑部にドルーゼンと呼ばれる病変が形成されますが、これは眼科医が行う眼底検査でも確認できます。
加齢黄斑変性
萎縮型(ドライ型)
加齢黄斑変性の85~90%が萎縮型(ドライ型)となります。加齢とともに黄斑が萎縮していくことにより発症しますが、症状の進行がゆっくりであることが特徴となります。萎縮型の加齢黄斑変性では、黄斑部にドルーゼンと呼ばれる白色または黄色の小さな病変が形成されます。
滲出(しんしゅつ)型(ウェット型)
滲出型(ウェット型)では、網膜のすぐ外側にある脈絡膜という部分から、新生血管と呼ばれる異常な血管が網膜まで伸びてきて障害を与えます。新生血管はもろいため血液成分が漏出し、網膜の下に腫れや水ぶくれを生じます。この状態になると著しい視力の低下が起こり、最悪の場合、失明する危険性もあります。
なぜ新生血管が発生するの?
細胞は新陳代謝を繰り返すものですが、これは網膜でも同じです。
網膜細胞の新陳代謝で生じる老廃物は、健康な網膜では網膜色素上皮という網膜と脈絡膜の間にある膜で消化されていきます。ところが、加齢により網膜色素上皮が正常に働かなくなると、老廃物は消化されずに網膜色素上皮の下に溜まっていきます。この状態は眼底検査でドルーゼンとして確認できます。
老廃物は網膜色素上皮で炎症を起こしますが、それを治癒するための成分である血管内皮増殖因子(けっかんないひぞうしょくいんし)に血管修復作用があるために副作用として脈絡膜から新生血管が発生してしまいます。
加齢黄斑変性のリスクファクター
加齢黄斑変性は50歳以上の高齢者に起こりやすく、「加齢」が最も大きなリスクファクターとなります。ただし、下記に当てはまる場合は50歳未満のうちから発症したり、症状の進行が早まる可能性があるために注意が必要です。
- 喫煙
- 肥満
- 紫外線
- 遺伝
喫煙は非喫煙者に比べて加齢黄斑変性の発症リスクが2倍になることが知られており、特に注意が必要です。すでに発症してしまっている患者はもちろん、予防としても禁煙が非常に重要となります。
加齢黄斑変性の治療方法
加齢黄斑変性の治療法は萎縮型と滲出型で異なります。
1.萎縮型(ドライ型)加齢黄斑変性の治療法
症状の進行がゆっくりなことで知られる萎縮型(ドライ型)の加齢黄斑変性に対しては、現在のところ有効な治療法は確立されていません。そのため加齢黄斑変性のリスクファクターを取り除くなどの予防対策を行い、また定期的に眼科検診を受け黄斑部に現れるドルーゼンを早期に見つけることが重要となります。
2.滲出型(ウェット型)加齢黄斑変性の治療法
滲出型(ウェット型)の加齢黄斑変性に対する根治療法は確立されていません。そのため新生血管の発生をコントロールしたり、取り除いたりすることにより対症療法を行い、視力の維持や改善をはかります。
① 新生血管阻害剤
新生血管の成長を活性化させる血管内皮増殖因子*の生成を抑える薬を眼球に注射し、新生血管の増殖や成長を抑制する治療法です。後述の光線力学療法と組み合わせて治療が行われることがあります。
(*血管内皮増殖因子については「加齢黄斑変性の種類」セクション内「なぜ新生血管が発生するの?」を参照)
② 光線力学的療法(PDT)
レーザーにより新生血管を取り除く治療法です。光に強く反応し、体内で新生血管に集まる性質がある成分を腕から点滴し、その後病巣にレーザーを照射することで周囲への組織を傷つけずに新生血管のみを取り除くことができます。
③ レーザー凝固
レーザーにより病変のある網膜を凝固させ、症状の進行を抑える治療法です。加齢黄斑変性に限らず網膜周辺に病変を起こす目の病気全般に対して行われます。眼病の種類によって波長の異なるレーザーを使用し、レーザーの届く位置をコントロールすることで的確に病変部を凝固することができます。ただし、病変が黄斑の中心にまで及んでいる場合には黄斑を傷つけ視力低下につながることがあるためにこの治療法が適切でない場合がほとんどとなります。
加齢黄斑変性の最新治療情報
細胞を培養して人工的に作られるiPS細胞は再生医療の切り札として期待されていますが、そのiPS細胞を加齢黄斑変性の治療に応用した治療法が開発されています。
iPS細胞応用による治療法確立へ向けての臨床実験
- 2014年9月に、加齢黄斑変性を患う70代の患者さん自身の細胞から作り出した(自家)iPS細胞をもとに、新たに網膜色素上皮シートを作成し移植しました。術後は良好で、拒絶反応もなく、視力も維持できているとのことです。
- 2017年3月に、滲出性加齢黄斑変性の患者へ他人の細胞から作り出した(他家)iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞懸濁液移植が実施されていますが、2018年1月に網膜浮腫の副作用がみられています。
加齢による細胞の機能低下が原因となる加齢黄斑変性では、これまで新生血管などの病変を取り除く「対処療法」が主とされてきました。iPS細胞の応用が加齢黄斑変性の治療法として確立されれば、根本的な原因を取り除く「根治療法」となり、加齢黄斑変性を本当の意味で治癒できることになります。
加齢黄斑変性の予防・改善方法
最新治療が開発されつつありますが、まだ根治療法として確立されるには時間がかかりそうです。対処療法が主となってしまう加齢黄斑変性では、予防・改善対策を行うことが大変重要となります。
1. リスクファクターを取り除く
前述した通り、加齢黄斑変性では喫煙、肥満、紫外線、そして遺伝がリスクファクターとなっています。加齢黄斑変性のリスクが高い中年~高齢者においての発症の予防や症状の改善においては、リスクファクターを取り除くことがまず最初のステップとなります。
① 禁煙
加齢黄斑変性の患者は非喫煙者より喫煙者に4倍多くみられ、喫煙者(過去に吸っていた人も含む)の加齢黄斑変性のリスクは非喫煙者に比べておよそ2倍高いという報告があります。
これを機会に、きっぱりと禁煙を決意してみましょう。
② 適度な運動と体重管理
肥満も加齢黄斑変性のリスクファクターとなっています。中年~高齢者でも継続しやすい運動にウォーキングがあります。
1週間に3回、少なくとも3kmは歩きましょう。また、炭水化物や糖分の摂取は控え、体重管理を心がけましょう。
③ 外出時の紫外線対策
紫外線により過度のダメージを眼に与え続けてしまうと加齢黄斑変性など眼の病気のリスクを生じます。
日中外出する際にはサングラスをかけ、帽子をかぶることで、目を保護することができます。
④ 眼科での定期検診
家族に加齢黄斑変性の発症歴がある、喫煙歴が長いなどリスクファクターに当てはまる項目がある場合は万が一の場合に備えて早期発見を心がける必要があります。
45~60歳であれば2年に1度、60歳以上であれば毎年、眼科で定期検査を受けることをおすすめします。
2. 目の健康に良い食生活を取り入れる
加齢黄斑変性は加齢により網膜や黄斑の機能が低下してしまうことが原因となっています。身体のどの部位においても言えることですが、健康的な食生活は細胞を正常な状態に保ち、加齢による機能低下を遅らせる効果が期待できます。
積極的に目に良い食材を摂取しましょう。
① 緑黄色野菜
緑黄色野菜にはカロテノイド(ルテインやゼアキサンチン)が豊富に含まれています。緑黄色野菜を多く食べる人は、あまり食べない人に比べて、加齢黄斑変性のリスクが43%低いことがわかっています。
② 魚
1週間に1~2回魚を食べることで加齢黄斑変性のリスクを40%以上下げられることが海外の研究で分かっています。
③ オレンジ
アメリカ臨床栄養学会誌に、オレンジを食べる人は加齢黄斑変性のリスクが低くなるという研究が2018年7月に発表されています。49歳以上の成人2,856人を対象に、15年間の追跡調査をしたところ、少なくとも1食分のオレンジを毎日食べていた人は、加齢黄斑変性の悪化のリスクが60%低下するという結果が報告されました。
④ 目の健康に特化したサプリメント
上記のような眼に良い食材に加えてサプリメントの補給をおすすめします。特に、ルテイン、ゼアキサンチンなどのカロテノイド、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、亜鉛を摂るようにしましょう。
ルテインと加齢黄斑変性
目の健康に良いとされるルテインやゼアキサンチンの加齢黄斑変性に対する働きは、国立眼研究所(NEI)の出資により実施されたAREDS1、AREDS2という大規模な臨床試験で実証されています。
AREDS1
1つ目の臨床試験は2001年に実施されました。加齢黄斑変性のリスクの高い患者に、抗酸化作用のあるビタミン、ミネラルを摂取してもらい、進行リスクを検証しました。抗酸化ビタミン、ミネラルを摂取した患者は、偽薬を摂取した患者と比較して、黄斑変性の進行が25%まで低下しました。
<AREDS1のフォーミュラ>
ビタミンC | 500mg |
ビタミンE | 400IU |
ベータカロテン | 15mg |
亜鉛 | 80mg |
銅 | 2mg |
AREDS2
先のAREDS1の臨床実験の結果を元に、2006年から5年間に渡りAREDS2という臨床試験が実施されました。AREDS2では、4,000人以上の加齢黄斑変性の患者を対象とし、AREDS1でのフォーミュラに新たにルテイン、ゼアキサンチンを追加し加齢黄斑変性の進行を検証しました。ルテインとゼアキサンチンを追加したことにより、加齢黄斑変性の進行のリスクが10~25%下がることが明らかとなりました。
<AREDS2で追加された成分>
ルテイン | 10mg |
ゼアキサンチン | 2mg |
ルテインを選ぶ際のポイント
市場には多くのルテインサプリメントが出回っていますが、前述の臨床実験で証明されたような効果を実感するためには高品質・高配合のものを選ぶ必要があります。下記の2点がポイントとなります。
① FloraGLOルテイン
FloraGLOルテインは、マリーゴールドの花から抽出された天然型のルテインで安全性が高く高品質であることで知られています。ルテインの有効性を証明した臨床実験AREDS2でもこのFloraGLOルテインが使用されました。
ルテインの種類に明確な表記がない場合、石油から生成した合成ルテインである場合があります。サプリメントが安価である場合は特にその可能性が高く、副作用の危険性もあります。
加齢黄斑変性の予防や改善にルテインを使用する場合には多く摂取しなければならないため、安全性が確立されていない成分では副作用のリスクが高くなってしまいます。必ずFloraGLOルテインを選びましょう。
② 高配合
AREDS2で有効性が証明された配合量と同等かそれ以上の量を配合しているものをおすすめします。最低でもルテインは10mg、ゼアキサンチンは2mg配合しているものを選びましょう。
この2点をクリアするサプリメントに、ドクターズチョイスの天然ルテイン40mgがあります。このサプリメントには1回の摂取量にFloraGLOルテイン40mgとゼアキサンチン2mgが配合されているだけではなく、相乗効果があるビルベリーも配合されています。高品質・高含有であるため、加齢黄斑変性の予防・改善への有効性を期待できるものとなっております。
- FloraGLOルテイン(40mg)
マリーゴールドから抽出した天然型のルテイン - ゼアキサンチン(2mg)
ルテインと共に黄斑部に存在し目の健康に重要な役割を持つ - ビルベリー(50mg)
ビルベリーに含まれるアントシアニンという成分が血管を通してルテインを眼に届ける働きがある
まとめ
加齢黄斑変性は加齢が原因で眼球の黄斑部が病変し、著しい視力の低下を引き起こしてしまう眼の病気です。
iPS細胞を応用して新しい組織を移植するなど様々な療法が開発されていますが、現在治療法として確立されているものは「病変した組織を取り除く」「病変の進行を遅らせる」などの対処療法に留まっています。根治療法が確立されていないからこそ、病気が発症・進行してしまう前に正しい知識を持って予防・改善に努めましょう。
定期的に眼科検診を受け、リスクファクターとなる生活習慣を絶つことはもちろん、食生活を見直して細胞の機能低下を防ぐことも重要となります。網膜や黄斑部においてはルテインやゼアキサンチンが加齢黄斑変性の症状の進行を10~25%下げることができることが臨床実験で証明されています。健康的な食事に高品質・高配合のルテインサプリメントを取り入れることで加齢黄斑変性の予防・改善に役立てましょう。