【医師監修】ED治療の基本は勃起改善の薬ですが、サプリメントによる自宅での改善も可能です
◇目次◇
増加しているEDによる不妊
不妊といえば、今までは女性が原因で妊娠できないという印象が強くありましたが、近年その傾向は変化してきており、男性に原因がある場合も多くなってきています。そもそも不妊とは、子どもをつくるための活動をしているのにもかかわらず、2年以上も妊娠できないことをいいます。
そして、その中でも男性側に問題があって妊娠できない場合を男性不妊といい、そうなってしまうのにはさまざまな要因があります。
男性不妊の原因の中には深刻なものもあり、あまりにひどい場合は妊娠によって子どもを授かるのを諦めなければならないこともあります。ですが、EDは不妊の中でも比較的問題が少なく、勃起を促すことで通常通りに性交できるようにもなりますし、精子に問題がなければ体外受精も可能です。
ですが、実際にEDが妊娠に与える影響は気になるところです。本当に妊娠できるのでしょうか?この記事で詳しく解説していきます。
EDとは?
そもそもEDとはどのような症状なのでしょうか。EDとはErectile Dysfunctionの略で、日本語では勃起障害という意味になります。似た言葉としてはインポテンス(性的不能)というものがありますが、EDもこれに含まれます。主に性交時に十分な勃起が起こらない、または維持できずに、満足な性交ができないという症状があります。
大きく分けて器質性※と心因性(機能性)の2つに分かれますが、多くの人は心因性に分類されます。また、器質性と心因性両方が原因となっている、混合性の人も一定数います。この2つの違いはどのようなものなのでしょうか?
※器質性 … 症状や疾患が臓器・組織の形態的異常にもとづいて生じている状態。
器質性EDとは?
1つ目の器質性EDとは、身体に何らかの障害があって、勃起ができない状態なっていることをいいます。このEDにはさらにいくつかの種類があり、神経に異常があったり、血管に障害があったり、分泌力に問題があったりとさまざまです。人によっては、これら複数のものが同時に起こっている場合もあります。具体的にどういうものがあるのか見ていきましょう。
血管性
動脈硬化などにより、血管障害が原因になって起こるのが血管性のEDです。陰茎の勃起には血液の流れがとても重要になりますので、血管に障害があると勃起にも異常が出てくることになります。
血管性は、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病が原因となって、起こるケースも多くなっています。特に糖尿病の場合は、健康な人に比べて2〜3倍なりやすいという調査結果もあるほどです。
神経性
神経性のEDは、神経に障害が起きることで発症します。勃起をする前には、性的刺激や興奮がありますので、それらに関連した中枢神経や末梢神経に異常があると、刺激を感じなくなり勃起が起こりません。血管性も糖尿病が原因になっていましたが、神経性のものも糖尿病が原因となって起こることがあります。
糖尿病はさまざまな合併症を引き起こす病気ですから、EDにも関係が深いものとなっているのです。それ以外では、前立腺の病気が原因となったり、陰茎部の手術などに起因することもあります。
内分泌性
内分泌とは、ホルモンの分泌のことをいいます。したがって、内分泌性のEDとは、ホルモンの分泌に異常があり勃起できない場合を指します。よく問題となるのは、テストステロンの分泌が少なくなってしまうことです。テストステロンとは男性ホルモンのひとつで、主に精巣でつくられています。
テストステロンが少なくなると、勃起する力が弱まるほか、精子の生産量が減ったり、性欲の減退にもつながります。このホルモンは加齢とともに減っていきますが、極端に減ってしまうと、男性更年期障害にもつながることがあります。テストステロンの分泌が低下する原因としては、加齢、アルコールのとりすぎや喫煙、ストレスなどが挙げられます。
心因性(機能性)EDとは?
2つ目の心因性EDは、器質性EDとは反対に、身体に障害がないのにEDになっている場合をいいます。機能性EDとも呼ばれ、精神的なことや心理的なことが原因となって勃起障害が起こります。以前は、EDの原因のほとんどが心因性のものだといわれていたほどで、物理的な身体の健康以外にも、精神面は大きくかかわっているのです。
例えば性交時には勃起せず、自慰行為の時には勃起したり、夜間陰茎勃起現象(いわゆる朝立ちや夜立ち)が起こる人は、勃起自体は問題ありません。ですから、こういう人は心因性のものと判断されます。
身体に異常がある場合は原因の特定や治療が比較的簡単ですが、目に見えない心因性のものは原因が特定しづらく、本人に自覚症状がない場合もあり、治療が難しくなります。また、メンタル的なことは別の病院での治療が必要になることが多く、それが負担にもなります。
本人は自分で治そうと試みるものの、焦りやプレッシャーを感じてしまい、余計に成功しにくくなってくるのです。そして、そのことが原因でさらに落ち込んでしまい、悪循環に陥ってしまうのです。
精神病によるもの
うつ病・総合失調症・不安神経症などの精神病も、EDにつながる恐れがあります。また、薬物依存やアルコール依存も、精神の病気としてEDを引き起こす可能性があります。仕事や人間関係でのさまざまなストレスにより、うつ病などの精神病になる人が増えており、これがEDを発症する人が増えている原因にもなっています。
うつ病の治療は薬物療法がメインになりますが、実はその治療薬には副作用として勃起に悪影響を及ぼすものも少なくありません。EDを治すためにうつ病の治療を始めたものの、逆に薬で悪化させてしまうという悪循環にならないように、気をつける必要があります。
うつ病などの精神病は医師に診断された時点で決まりますが、実はうつ病なのに病院に行っていないために、本人が気づいていないというケースもあり、それがEDの治療を遅れさせる原因にもなっています。
精神的、心理的なもの
うつ病になっていなくても、予備軍の状態でEDになっている可能性があるのは否定できません。こういう人は仕事や家庭内など、あらゆる方面からのストレスを受けやすく、それが原因になることもあります。その中でもとりわけ多いのは、以下のような男女間の問題や性に関するものです。
- 恋愛や夫婦間の問題
- 過去のトラウマによるもの
- 自分の性器や性交に対しての不安など、コンプレックスに起因するもの
仕事のストレスなどは、直接性交に関係のないことですが、そういったものが要因となることも多くあります。仕事でひどく落ち込むようなことが長く続いていると、ホルモンバランスの崩れなどが起こり、EDにつながってしまうのです。心因性のものは、若い人によく起こる症状になります。一時的なものや特定の状況下で起こることもあります。
勃起のメカニズム
勃起は陰茎を構成しているもののうち、陰茎海綿体というものに大量の血液が流れ込むことで起こります。通常、海綿体周辺の血管は勝手に血液が流れ込まないように縮んでいますが、性的なイメージや視覚などの刺激、あるいは陰部などに直接的な刺激があると、陰茎への動脈が広がってゆき陰茎海綿体へどんどん血液が流れていきます。
そして一気に集まった血液の圧力により、海綿体は硬化していき、同時に静脈も圧迫されて血液が陰茎にとどまることで、勃起状態を維持できるのです。ですからEDとは、何らかの原因により性的興奮を感じることができなかったり、血流に障害があることで、これらの機能が働いていない状態になっているといえます。
男性不妊の原因
EDなどの男性不妊になってしまう原因はさまざまですが、大きくは先天的なものと後天的なものに分かれます。
・先天性のもの
先天性のものは、正常に精子がつくられないなどの遺伝的な要因により、もともと生殖能力に問題があって男性不妊とされる場合です。これに該当する人は、後天性のものに比べると多くはありませんが、自然妊娠が難しくなってしまうなど、深刻なケースになる場合もあります。
・後天性のもの
後天性のものでもっとも多い原因は、加齢です。勃起は男性ホルモンと深いつながりがあります。そして男性ホルモンは20歳を境に減りはじめることが分かっています。ですから、加齢とともにEDになる可能性が高くなるのは自然なことです。EDの人はその兆候がより強く出ているということなのです。
ほかにも意外に問題となるのが、仕事のデスクワークや運転業務をしている場合です。このように長時間イスに座っている状態だと、性器付近の温度が高くなってしまい、精巣の働きが悪くなったりといった異常が出てしまいます。その結果、不妊へとつながってしまうのです。また、以下のような事柄も後天性の男性不妊の一因となります。
- ストレス
- 喫煙
- アルコール
- 肥満
- 病気の影響
- 糖尿病などの生活習慣病
- 性器の障害

男性不妊で問題となる造精機能とは?
ED以外にも男性が原因となる不妊には、いくつかの種類があります。もしEDが原因で性交ができなくても、精子が採取できれば他の方法で妊娠することも可能です。しかし、障害により精子自体が生産されないタイプの男性不妊もあります。
その場合、妊娠できる可能性は下がってしまいます。この障害とEDが併発している場合は、両方の治療が必要だということを覚えておかなくてはいけません。この障害は、造精機能障害(精子形成障害)といわれており、男性不妊の原因としてはとても多いものです。
造精機能とは元気な精子をつくる働きのことで、異常があると精子の数が少なかったり、つくれないといったことが起こります。性交時に射精された精子は、卵管に到達して受精するまでに、ほとんどが死んでしまいます。
健康な人の精子は、数を減らしながらも受精することが可能ですが、元気がなかったり、数が少なかったりすると、卵管に到達できず、妊娠できない原因になってしまうのです。造精機能障害は3つに分けられ、以下のようなものがあげられます。
精子無力症
精子の数に問題はないものの、動きがあまりなく元気がない状態をいいます。また、健康な人の精子の運動率(前進する精子の割合)は60〜80%程度ですが、異常がある人は40%に満たず、妊娠するのに十分だとはいえません。精子無力症になる原因は、はっきりしない場合も多く、原因不明のケースもそれなりにあります。
環境ホルモンや生活環境の変化などが原因とも考えられますが、それを解明するのは簡単ではありません。実は精子の質が悪くなっているのは日本だけではありません。世界的に悪化しており日本人だけに限った原因ではないといえます。
乏精子症(ぼうせいししょう)
精液を検査で調べた時に、1ml中の精子の数が1500万より少ない場合、乏精子症と診断されます。正常な人の数は、1ml中に5000万〜1億にもなりますので、半分以下の数ということになります。
自然な妊娠には、4000万以上いることが無難だとされていますので、乏精子症は妊娠する可能性はあるものの、男性不妊と診断される原因になってしまいます。この症状は精子無力症と同時に起こることもあります。
無精子症
射精した精液の中に精子がまったくない状態が無精子症です。無精子症は、その症状によってさらに2つのタイプに分かれます。1つは閉塞性無精子症で、もう1つは非閉塞性無精子症です。
閉塞性無精子症
精巣内で精子はつくられているにもかかわらず、射精のときに通過する精管・射精管・精巣上体管が、何らかの理由によりふさがれ、精子が排出されない状態です。精管がふさがれる理由は、先天的に精管に欠損がある場合や、精路感染症などがあります。また、射精管の場合は前立腺疾患などが原因になりますが、精巣上体管がふさがれる理由は、はっきりとわかっていません。
閉塞性の場合は、ふさがっている部分を手術で開く、精路再建術という治療方法があります。顕微鏡を使用して行う難易度の高い手術にはなりますが、これにより精子が排出されるようになれば、性交によって妊娠も可能になります。
非閉塞性無精子症
普通は精巣で産生されている精子が、何らかの原因でまったくつくられていない状態です。閉塞性のような異常は確認できないのに、精子が排出されないため無精子症とされています。非閉塞性はほとんどの場合、治療で精子の産生を正常にすることはできません。
ですが、人によっては精巣内でつくられている場合もあり、それを採取することで妊娠できる可能性はあります。このような手術を顕微鏡下精巣内精子回収法(micro-TESE)といいます。以前は精子を採取できる可能性は低かったのですが、この手術方法の登場により可能性は大きく高まり、不妊の解決策として行われています。
ED治療の進め方
治療は、まず病院で相談することから始まります。病院は泌尿器科を受診しますが、不妊に力を入れている病院か、不妊専門の病院がいいでしょう。中には男性の不妊に対して力を入れている病院もありますので、近くにないか探してみましょう。
実際の診察では問診を行い、必要に応じて血液や血圧、心電図などの検査が行われます。治療は主治医と相談しながらになりますが、器質性EDで、動脈硬化や加齢が原因となっている場合、治療薬である「PDE5阻害薬」のバイアグラやシアリスなどを服用することが多くなります。
これらの薬は改善率が非常に高くなっており、よく処方されています。しかも厚生労働省に認可された薬で安全性が高く、副作用もあまりないため効果的な薬となっています。
男性不妊症の予防方法
EDもそれ以外の男性不妊も、子どもをつくる予定がある場合には、不妊になる可能性を避けるため、あらかじめ予防をしておくことが大切です。基本は、一般に健康的だとされている生活を送ることで、ある程度予防することはできます。
肥満の対策のため、ウォーキングなど軽い運動を行う
- バランスのとれた食事を摂る
- 十分な睡眠時間をとる
- アルコールを摂りすぎないようにする
- タバコを控える、またはやめる
- 長時間イスに座る場合は、性器部に熱がたまらないように工夫する
イスに長時間座る場合は、熱をためないように風通しの良いズボンを履いたり、下着をトランクスにするなど工夫しましょう。正常な妊娠のためには、女性だけではなく男性の健康も重要です。自然妊娠のために積極的に予防を行いましょう。
おすすめのサプリメント
症状によってはバイアグラなどのPDE5阻害薬を服用することで、高い確率でEDを改善することが可能です。しかし、性に関することですので、病院に行くことに抵抗がある人もいると思います。
そんな人におすすめなのが、自宅でも簡単に摂取できるサプリメントです。天然のバイアグラとも呼ばれるマカは、男性機能をアップさせることで有名ですが、その中でも臨床実験で使用されており、効果も高い「黒マカ」なら効果が実感できます。
まとめ
勃起は加齢が原因となることも多く、誰にでも起こる可能性があります。成人男性の3〜4人に1人はED、さらに50〜60代男性の2人に1人はEDというデータもあります。ですから、決して珍しくはありませんし、恥ずかしいことでもありません。あまり気にしすぎないようにしましょう。必要以上に気にしてしまうと、それが原因でさらに悪化することにもなってしまいます。
恥だと感じてしまうと、病院を受診するのも億劫になり、治療ができずに子どもをつくる機会を逃してしまうこともあります。自力で治すよりも、早めに病院を受診して改善していきましょう。
この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。