この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
マルチビタミンの効果
ビタミンは人の身体にさまざまな効果をもたらしてくれます。ビタミン自体が人のエネルギーになるわけではありませんが、人の身体の各機能を調節して、健康を維持してくれる役割を担っています。ビタミンは大きく「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」に分けられ、脂溶性ビタミンは脂に溶けて体内に蓄積されますが、水溶性ビタミンは蓄積されません。
よくビタミンを摂ったほうがいいといわれますが、その理由は水溶性ビタミンが体外へ排出される性質があり、定期的に補給する必要があるからなのです。では、実際にビタミンを摂ることで、どのような効果があるのでしょうか。
・筋トレの効果アップ
筋肉をつけるのに必要なのはタンパク質で、効率よくタンパク質を摂取できるプロテインも一種のサプリメントです。筋トレは多くのエネルギーを消費し、筋トレにより損傷した筋肉の修復にもエネルギーが必要になります。ビタミンはエネルギー代謝に欠かせない存在で、筋肉を効率よく修復する働きもあります。
それから、人が激しい運動をすると体内で活性酸素が発生します。活性酸素は細胞を酸化させて傷をつけてしまう「酸化ストレス」を引き起こします。その酸化から守る「抗酸化作用」を持っているのがビタミンCやビタミンEです。これらの成分を摂るにより、身体を酸化させることなく筋肉をつけることができるのです。
また、最近の研究ではビタミンDが、直接筋肉の増強にかかわっていることもわかってきました。筋肉の受容体にビタミンDが結合することによって、筋肉中のタンパク質の合成を促しているということがわかっています。タンパク質はトレーニングによって損傷した筋肉を修復してより強くする働きがありますので、ビタミンDが筋トレの効果をあげるということですね。
・ダイエット
ビタミンDの血中濃度が低いと、正常な人とくらべて、メタボリック症候群になる確率が50%近くも高くなるという報告があります。つまりビタミンDが不足していると、太りやすくなるということです。これは、先ほどのビタミンDが筋力を強化するという話に関連していて、代謝が良くなり脂肪が燃焼しやすくなることが、メタボの予防になっているのではないかと考えられています。
・風邪対策と予防
風邪にはビタミンCが良いとよくいいますが、ほかにビタミンDも免疫バランスを調整するため、風邪を予防する働きがあります。ビタミンDは日光を浴びることでもつくり出せますが、米国のある研究では、血液中のビタミンD濃度は、日照時間が一番短い2月にもっとも低くなり、もっとも長い8月にビタミンD濃度が最高になることがわかりました。
そして、2月はインフルエンザにかかる人がもっとも増える時期ですので、ビタミンD不足が風邪に影響している可能性もあるといえるでしょう。ですから、家の中にばかりいて日光を浴びていない人は、ビタミンDを積極的に摂取するといいでしょう。
・老化防止
ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEは抗酸化作用を持っています。これらのビタミンが不足し、抗酸化作用が働かなくなると、活性酸素が増え体が酸化して、人の細胞はどんどん傷ついていきます。その結果、老化だけでなく動脈硬化・糖尿病・白内障などの病気にかかりやすくなってしまうのです。ですから、マルチビタミンを摂ることはその予防になるといえます。
・美肌効果
ビタミンCには美肌効果があることが有名です。その理由は肌を構成する栄養素である、コラーゲンをつくるのを助けてくれるからです。また、ニキビの予防や改善にも効果があり、ビタミンB2はニキビの原因となる皮脂の過剰分泌を抑え、ビタミンB6は皮膚炎を予防してくれます。ビタミンCの効果を高めるためには、コラーゲンを同時に摂取するとよいでしょう。
天然ビタミンと合成ビタミン
実際に薬局やネットショッピングなどでマルチビタミンのサプリメントをみてみると、非常に安価なものから高価なものまでさまざまです。どうしてこんなに価格の差が出てしまうのでしょうか?高価になってしまう理由は、各成分の抽出の難しさにあります。
特にビタミンCなどの、「加熱で壊れやすく水に溶けやすい」といったデリケートな性質を持つものは、天然由来で作ろうとするとコストがかかってしまうのです。そこで、簡単につくることができ、さらにコストを下げることはできないかと考え出されたのが、合成ビタミンです。
合成ビタミンは、天然のものとまったく同じ分子構造をしており、人に対する影響も同じだと考えられています。例えばビタミンCは、ジャガイモやトウモロコシなどに含まれるデンプンを加水分解してできたブドウ糖を原料にして、発酵させることでアスコルビン酸(ビタミンC)に合成できます。
その時の精製や分離といった過程では石油を用いており、人の身体に悪影響はないほどの残留量だといわれていますが、健康のことを考えるならおすすめしにくいものです。そして、石油由来のマルチビタミンは、飲むと尿が黄色くなります。
これは身体に吸収されず、尿と一緒に排出されているだけということになります。天然のものは、そうはなりません。健康のために飲むのに、身体に悪いものを摂取しては意味がないので、できるだけ天然のものを選ぶことをおすすめします。では、合成か天然かをどのように見分ければいいのでしょうか?
合成と天然の見分け方
合成か天然かを確実に見分けるのは難しいですが、ある程度はわかります。まず単純に安価なものは、合成ビタミンの可能性が高いです。合成ビタミンはコストがあまりかからないからです。マルチビタミンに限らず、サプリメントを選ぶ時に「なるべく安価なもの」を選んでいませんか?
確かに安価なほうが経済的には助かりますが、「安かろう悪かろう」という言葉もあるように、安価なものでいいものは多くありません。安いものこそ、使われている原材料や栄養素の含有量などをしっかりチェックする必要があります。できれば、安価なものというよりも「コスパのいいもの」という意識で選ぶといいでしょう。
また、タブレットの粒が小さいものは合成の可能性があります。コストや技術の面からみて、小さい粒に大量のビタミンを含有させるのは難しいため、小さな粒なのに「1粒で1000mgのビタミン」などとうたっている製品は、合成ビタミンである可能性が高いのです。
マルチビタミンサプリメントの選び方
マルチビタミン、マルチミネラルのサプリメントを選ぶときは、基本的に何を必要としているかによって選ぶといいでしょう。例えば筋トレの効果をあげたい男性におすすめなのは、ビタミンA・C・Dが入ったもの、肌をきれいにしたい女性はビタミンB群・ビタミンCが入ったもの、という具合です。
くれぐれも、「よく聞くブランドだから良いはず」という理由で選ばないようにしましょう。そのほかの栄養素は、人に必要な必須ビタミン・必須ミネラルを含むものがいいでしょう。必須ビタミン13種と必須ミネラル16種は以下のものです。
・必須ビタミン
ビタミンA、B群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)、C、D、E、K
・必須ミネラル
カルシウム、ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウム、硫黄、塩素、鉄、銅、マンガン、ヨウ素、亜鉛、モリブデン、セレン、コバルト、クロム
そして安全性が高く、含まれている栄養素の多いものがおすすめです。ホールフード(素材の皮や種をすべて使ったもの)のサプリメントは、それ以外のものよりも栄養素が多くなっています。さらに、健康のために飲むならオーガニックのものを選びましょう。値段は高価になってしまいますが、それだけ効果も高いものが多いです。
どうしても安価なものとくらべてしまいますが、本来ならこの値段のほうが基準値だといえます。それに高いといっても、同じ量のビタミンを野菜などから摂取しようとしたら、かなりの額になるはずで、パッと見はサプリメントのほうが高価に感じますが、実際は野菜などを買うよりも安くなります。
海外産と国産ではどちらがいい?
流通やインターネットの普及により、海外のものが日本でも買えたり、日本で個人輸入をすることも簡単になってきました。サプリメントでも海外のものは日本より安い場合もあり、人気があります。アメリカでは3分の1以上の人が、マルチビタミンのサプリメントを摂取しているというデータもあり、それだけ人気なので製品もさまざまなものが販売されています。
ですが、安全性などは問題ないのでしょうか?海外のサプリメントは、成分の含有量が多いものがほとんどです。飲むときは、成分の量をしっかりチェックして、摂りすぎないように調節しましょう。
また、日本ではサプリメントとして認可されていない成分も含まれている可能性があるため、その部分についてもよく確認して、ほかに服用している薬と相互作用がないかなどを、担当医師に確認しておく必要があります。
サプリメントを摂取する時の注意点は?
マルチビタミンやマルチミネラルのサプリメントに限らず、サプリメントを摂取する時は、1日に必要な量を超えないように注意しましょう。身体にいいからといって、1日の摂取量を大幅に超えるのはやめましょう。どんなものも摂りすぎは身体に悪影響を及ぼします。
また、ビタミンB群やビタミンCなどは水溶性で、身体に必要な分を超えたものは排出されてしまいますので、摂った分だけ吸収されるというものではありません。毎日必要量を継続して摂るようにしましょう。
自分に合った量を摂取するのが一番ですので、病院で検査を受けて不足している栄養素を知るという方法もあります。最近は尿を採取して郵送するだけで、足りない栄養素を教えてくれるサービスなどもありますので、そういったものを利用するのもいいでしょう。
また、ほかのものと同時に摂取することの危険性ですが、問題となることはほとんどありません。ひとつだけ注意する点は、心筋梗塞・静脈血栓・脳血栓症といった血栓塞栓症を改善する「ワルファリン」という薬を服用している時です。この薬は血液の凝固を改善しますが、ビタミンKがこの薬の効果を弱めることがあります。
そのため、この薬を処方されている場合は、医師に知らせておくことが重要になります。それから、サプリメントを摂取するタイミングですが、実は薬事法により記載できないこととなっています。サプリメントによって違いますが、マルチビタミン・マルチミネラルは食後のほうが吸収率が上がります。その際、脂質を含むものを一緒に摂るとさらに吸収率がよくなります。
逆に、タンニンやカフェインといった成分が含まれている、お茶やコーヒーと一緒に摂ると吸収が悪くなることがありますので注意しましょう。
おすすめのサプリメント
マルチビタミンを摂る場合、野菜や果物からの摂取しようとすると大量に摂らなくてはならないため、大変でとても続けられません。ですから、マルチビタミンの摂取はサプリメントからが基本になります。
ですが、どのサプリメントでもいいというわけではなく、品質が高く安全な素材でつくられているものが身体にとっては安心です。おすすめのサプリメントをご紹介しましょう。
ドクターズチョイス マルチビタミン&ミネラル1日1粒
「ドクターズチョイス マルチビタミン&ミネラル1日1粒 」は、高麗人参や霊芝など、気軽に摂取できないものも含め、20種類以上のオーガニック素材を使用。しかも、ホールフードで抽出していますので、野菜や果物を丸ごと摂取することが可能です。
粒は他社のサプリメントよりも大きめになりますが、それだけ多くの天然素材が詰まっているということです。すべて天然素材ですので、石油由来のものとくらべて尿の色が黄色にならず、栄養がちゃんと吸収されていることがわかります。
まとめ
マルチビタミン・マルチミネラルを選ぶときは、自分のライフスタイルや身体の状態を考慮し、不足しているものを補う形で摂取するのが適切です。また、できれば身体のことを考えて、余計な添加物が含まれていないオーガニックのものを選ぶほうがいいでしょう。
良いサプリメントは高価ですが、安くて悪いものを摂取して身体を壊してしまうと、その治療代の方が高くなってしまうこともあります。自分の体内に入れるものですから、くれぐれも気を使って選んでいきましょう。