◇目次◇
この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
背中ニキビの原因
背中ニキビは、背中、首、肩、二の腕、胸、太もも、お尻など体にできる赤いブツブツのことで、身体ニキビ(体ニキビ)とも呼ばれます。
背中ニキビは正式な病名ではなく、体部にできるニキビ状の湿疹を総称した言葉です。背中ニキビには、マラセチア毛包炎、ニキビ、おできなどさまざまなできものが含まれています。
背中ニキビの多くは、もともと人間皮膚に存在している常在菌である『マラセチア菌』が異常に繁殖することで起こる、マラセチア毛包炎や同じく常在菌である「黄色ブドウ球菌」の異常繁殖が原因です。
背中ニキビの症状
背中ニキビは、毛穴で「マラセチア菌」や「黄色ブドウ球菌」が繁殖し炎症が起き、毛穴の位置に小さく盛り上がった「丘疹」と呼ばれる、赤いブツブツができます。
丘疹はかゆみを伴うこともあり、悪化してしまうと痛みを伴う膿のたまった「膿疱」になることもあります。膿疱は跡が残りやすく、治るまでに時間がかかってしまいます。
マラセチア菌が原因の皮膚病
背中ニキビの主な原因と考えられているマラセチア菌はカビ(真菌)の仲間です。
背中ニキビであるマラセチア毛包炎だけでなく、以下のように体の各部に起こる皮膚病の原因にもなります。
病名 | 主な発生部位 | 形状 | 症状 |
---|---|---|---|
マラセチア毛包炎 | 背中、首、肩、二の腕、胸、太もも、お尻などの毛穴 | 小さな赤いブツブツが毛穴の位置に多数発生する | ・かゆみがある ・悪化すると膿、痛みを生じる |
癜風 | 首、胸、背中、腕などの皮膚表面 | 褐色~淡紅色のシミ状、または皮膚が脱色したように見える白色 | ・自覚症状はほとんどない |
脂漏性皮膚炎 | 頭(髪の生え際)、顔(鼻の周り)、脇、胸、背中など皮膚表面 | 赤い斑点が体の左右対称に発生する | ・患部のフケやアカが多い ・患部が脂でギトギトする |
病名 | 主な発生部位 | 形状 | 症状 |
---|---|---|---|
マラセチア毛包炎 | 背中、首、肩、二の腕、胸、太もも、お尻などの毛穴 | 小さな赤いブツブツが毛穴の位置に多数発生する | ・かゆみがある ・悪化すると膿、痛みを生じる |
癜風 | 首、胸、背中、腕などの皮膚表面 | 褐色~淡紅色のシミ状、または皮膚が脱色したように見える白色 | ・自覚症状はほとんどない |
脂漏性皮膚炎 | 頭(髪の生え際)、顔(鼻の周り)、脇、胸、背中など皮膚表面 | 赤い斑点が体の左右対称に発生する | ・患部のフケやアカが多い ・患部が脂でギトギトする |
マラセチア菌は、現在知られているだけで14種類あり、人間の皮膚に存在しているマラセチア菌は主に2種類です。
上記の皮膚病は、マラセチア菌の中でも別々の種類の菌が起こしているとする意見もありますが、はっきりとしたことは分かっていません。
どれか1つでもこれらの病気にかかったことがある方は、マラセチア菌による他の皮膚病にもかかりやすいと考えられます。
顔のニキビと背中ニキビの違い
ニキビとは?
ニキビはざ瘡ともいわれ、毛穴の位置にできるボツボツを指します。
毛穴から出る皮脂や毛穴の角質が硬くなることで毛穴が詰まり、皮膚に誰もが持っている菌(常在菌)が毛穴の中で繁殖することでニキビになります。発生する過程は顔のニキビも背中ニキビも同じです。
ニキビは顔と背中では原因菌が違う
顔のニキビと背中ニキビでは、毛穴の中で繁殖する菌の種類が違います。
顔のニキビ(尋常性ざ瘡)の主な原因菌は細菌であるアクネ菌です。アクネ菌によるニキビの場合は、ブツブツの盛り上がりが大きく、中心部に乳白色から黄色の膿のかたまりが見られることがあります。
身体のニキビ(マラセチア毛包炎)の主な原因菌は真菌(カビの仲間)であるマラセチア菌で、ブツブツの中心がくぼんで見えることがあり、中心部は赤黒く見えます。
顔の場合は単独でできる場合が多く、背中ニキビの場合広い範囲に散らばるように発生します。
背中ニキビと間違えやすい皮膚病
背中ニキビと間違えやすい代表的な皮膚病を比較しました。
病名 | 主な原因 | ブツブツの出かた | 症状 |
---|---|---|---|
おでき (毛包性膿皮症) |
黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌(どちらも細菌) | 首、顔、尻、乳房などに単独で出る | ・痛いことがある |
とびひ (伝染性膿痂疹) |
黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌(どちらも細菌) | 全身の皮膚の表面に水膨れや膿状のかさぶたができる | ・かゆみがあり、かくことで広がる |
あせも (汗疹) |
汗の管が詰まって壊れる | 全身の皮膚に小さな赤いブツブツや水膨れができる | ・かゆみや触ると痛みがある |
かぶれ (接触皮膚炎) |
チクチクするもの、毒、アレルギーのあるものに触れる | 原因物質に触れた部位のみにブツブツや水膨れ、ただれができる | ・痛みやかゆみがある |
病名 | 主な原因 | ブツブツの出かた | 症状 |
---|---|---|---|
おでき (毛包性膿皮症) |
黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌(どちらも細菌) | 首、顔、尻、乳房などに単独で出る | ・痛いことがある |
とびひ (伝染性膿痂疹) |
黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌(どちらも細菌) | 全身の皮膚の表面に水膨れや膿状のかさぶたができる | ・かゆみがあり、かくことで広がる |
あせも (汗疹) |
汗の管が詰まって壊れる | 全身の皮膚に小さな赤いブツブツや水膨れができる | ・かゆみや触ると痛みがある |
かぶれ (接触皮膚炎) |
チクチクするもの、毒、アレルギーのあるものに触れる | 原因物質に触れた部位のみにブツブツや水膨れ、ただれができる | ・痛みやかゆみがある |
皮膚のブツブツにはさまざまな原因があり治療方法も異なります。見た目で判断することが難しい場合もありますが、ブツブツの出かたには特徴があります。
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おでき | とびひ | あせも |
背中ニキビが増えた
発汗などにより毛穴に皮脂や汚れが詰まると、マラセチア菌をはじめとした常在菌が異常繁殖し、
背中ニキビが増えてしまいます。
毛穴に皮脂や汚れが詰まりやすいのは
- 思春期以降の年齢
- 汗かきな体質
- 高温多湿で汗がでやすい環境にいる
- 春から夏、梅雨などジメジメとした季節
- 運動などで汗をかく機会が多い
背中ニキビになりやすい生活習慣
- 体をゴシゴシ擦って洗う(皮膚についた小さな傷から菌が入りやすくなる)
- 石鹸を使わないで洗う(古い皮脂が皮膚に残る)
- 体を洗ってから髪を洗う(シャンプーやリンスが体に残って毛穴をふさいでしまう)
- お風呂に浸からない(毛穴が開かず、毛穴の奥に古い皮脂が残る)
- 吸湿性の高い下着をつける(汗は吸うが、乾きにくいため皮膚が高温多湿になる)
- シャワー浴や着替えができない時に運動する(汗を放置することで菌が繁殖する)
別の病気による影響
背中ニキビは、糖尿病や免疫が低下する病気にかかっている人では発生しやすく、一度できるとなかなか治らないことがあります。
また、ストレスによってホルモンのバランスが崩れている人やステロイド薬を使用している人も背中ニキビができやすいと考えられています。
背中ニキビを予防する生活習慣
背中ニキビがなかなか治らない場合や予防のためには、次ののような生活習慣がおすすめです。
肌に優しく殺菌作用があるボディーソープで洗う
皮膚の汚れはゴシゴシ擦るより、泡で優しく洗う方がきれいに落ちます。また、皮膚に傷がつかないため、小さな傷から菌が入るのを防ぐことができます。
肌に優しくニキビ菌を殺すファンガソープがおすすめです。
先に髪をシャンプーしてから体を洗う
シャンプーやリンスには髪を保護する成分が含まれているため、お湯で流す際にヌルヌルとした成分が体にもついてしまいます。
コーティング成分が皮膚の表面もコーティングしてしまい毛穴をふさいでしまいます。ふさがれた毛穴の中では菌が繁殖しやすくなります。先にシャンプーをしてから体を洗いシャンプーの成分を洗い流しましょう。
髪と体を洗う前後でお風呂につかる
体は冷えた状態だと毛穴が閉まっています。お風呂に浸かって体を温めることで毛穴を開き、毛穴の奥の古い皮脂を浮かせます。
次に髪と体を洗います。最後に、もう一度お風呂に浸かります。理由には二つあり、一つは体を洗った後でお風呂に浸かることで、シャワーだけでは流しきれなかった石鹸類を落とすことができるためです。
二つ目は、お風呂に浸かることで汗をだして皮膚に適度な脂分を戻すためです。
石鹸は皮膚の乾燥を防ぐために必要な脂分まで落としてしまいます。皮膚が乾燥していると勘違いした体は、皮脂を大量に作ります。
背中ニキビの原因菌が餌にする皮脂を大量に作らないよう、体を洗った後もお風呂につかって適度な発汗を促しましょう。
吸湿性と速乾性のある素材の下着をつける
吸湿性の高い下着は、汗をよく吸い取るという面ではよいのですが、生地の中に水分をため込んで乾きにくいという性質があるため、皮膚が高温多湿になりやすく、背中ニキビ対策としては逆効果です。
下着を選ぶ際は、吸湿性だけではなく、速乾性のある生地で作られたものを選ぶ必要があります。
脂っこいものや甘いものを食べ過ぎない
食生活も背中ニキビに影響します。脂っこいものや甘いものは汗の質を悪くし毛穴のつまりにつながります。
バランスの良い食事を心がけ、ビタミンやミネラルを積極的にとることで、お肌の調子も整えられます。
十分な睡眠をとりストレスをためない
睡眠不足やストレスは免疫力の低下につながり菌の繁殖を助長します。睡眠不足が続いたりストレスがたまった状態が続くと、ホルモンのバランスが乱れ、皮膚トラブルの原因にもなります。
夜更かしを避け、十分な睡眠時間を確保するとともに自分なりのストレス解消法を持ちましょう。
適度な運動を心がけ運動後は清潔にする
適度な運動は血行を促進し皮膚の新陳代謝を促します。汗をかくことで毛穴の奥に詰まった皮脂を排出する効果も期待できます。
ただし、運動後はすぐにシャワー浴(できれば入浴)や着替えをしないと、皮膚の表面に汗や脂分がとどまり、背中ニキビができやすくなってしまいます。運動後に体を清潔にできる時間や場所を確保したうえで運動を行いましょう。
背中ニキビの自宅ケア
生活習慣に気をつけながら、背中ニキビを自宅ケアすることも十分可能です。
原因菌を殺菌するボディーソープを使う
抗生物質など薬剤による副作用の心配が全くない『ドクターズチョイス ファンガソープEX』をおすすめします。
ナチュラル成分のみで作られているボディソープで、背中ニキビの原因になるマラセチア菌や黄色ブドウ球菌を99.9%殺菌できます。
皮脂の分泌も抑えることができ、抗生物質が含まれていないため、耐性菌が発生する心配もありません。
背中ニキビは、自分では届きにくい場所に広範囲に発生することが多いため、塗り薬を塗るのは大変です。ボディーソープは使用しやすく自宅ケアにおすすめです。
背中ニキビの市販薬を使う
背中ニキビ対策として、塗り薬やスプレータイプの薬が市販されています。これらの市販薬は成分がさまざまで、原因菌を殺菌することを目的とした薬と症状を緩和することを目的とした薬があります。
背中ニキビ用の市販薬の多くは、第2類医薬品または医薬部外品ですので、薬剤師の説明を聞かなくても購入できますが、薬剤師に相談し副作用の説明などを受けるようにしましょう。
病院に行く必要があるとき
以下のような場合には、セルフケアではなく、皮膚科の受診をおすすめします。
- 市販薬やボディーソープを使っても症状が改善しない、または悪化したとき
背中ニキビには、市販薬やボディーソープが販売されています。まずは、セルフケアでこれらの薬やボディーソープを試し、症状が良くならない場合や悪化してしまった場合には、一度、皮膚科で検査されることをおすすめします。 - 膿など分泌物が多い時
背中ニキビには膿が溜まっていることがありますが、この膿や分泌物が多い場合には、注意が必要です。背中ニキビの主な原因は真菌であるマラセチア菌ですが、背中ニキビをかいたり、服でこすれたりすると傷がつき、そこに細菌が感染することがあります。つまり、膿や分泌物が多い場合には、さまざまな菌が同時に繁殖している可能性があります。このような場合には、市販薬では治りにくく悪化しやすいため、早めに皮膚科で治療しましょう。 - とびひが疑われる場合
背中ニキビは広範囲にできるため、背中ニキビの中に様々なブツブツが混ざっていることがあります。特に、水膨れや膿のかさぶたが出来ている場合には、とびひが疑われます。とびひは、感染力が強く、分泌物が付いた別の皮膚に次々と感染し、どんどん広がってしまいます。もちろん、他人にも感染してしまいますので、皮膚科医の管理のもと、しっかりと治す必要があります。 - 糖尿病などの持病があるとき
糖尿病など免疫力が低下する持病をお持ちの方は、背中ニキビが治りにくいことがあります。持病をお持ちの方は主治医や皮膚科で相談されることをおすすめします。