おりものとは?
おりものとは、女性特有の臓器である子宮、膣から分泌される液体が膣の外に流失したもので、「帯下(たいげ)」や「こしけ」とも表現されます。尿とは異なり、自分で排出のタイミングが調整できないため、下着の汚れやにおいの原因となり、不快感を伴うことが多いものです。しかし、女性の体にとって必要なものでもあります。
おりものには、膣から体の中に入って来た微生物を洗い流す作用があります。これにより「膣の自浄作用」を助けます。おりものは、少量ずつ膣の外に流れ出ることによって、感染症から身を守っているのです。
この他にも、おりものは、妊娠するためにも必要なものです。人の精子は、乾燥した環境では生きることができません。このため、おりもの(性分泌液)は膣内や子宮を潤すことにより、精子を保護し、受精を助けています。
このように、おりものは女性の体にとって重要な役割を果たしています。また、女性の体の状態を知るための指標にもなります。普段の生活では不快に感じることの多いおりものですが、実はとても大切な役割を担っているのです。
おりものの善玉菌、デーデルライン桿菌(かんきん)
おりものは微生物を洗い流すことで感染症を防ぐという重要な役割を担っていますが、具体的には、『デーデルライン桿菌』という乳酸菌の作用によりこれが起こります。
デーデルライン桿菌は、体にとって必要な、いわゆる善玉菌です。この菌は、膣内の粘膜にあるグリコーゲンを利用して育ちますが、その過程で乳酸を作ります。乳酸はとても強い酸性であるため、おりものの中に含まれることによって殺菌作用を示し、膣内の病原菌の繁殖を防いでくれます。
おりものがないと、膣内が乾燥し、様々な微生物(細菌、真菌、ウイルス、原生生物など)が膣を通して体の中に侵入し、デーデルライン桿菌が育ちません。デーデルライン桿菌が育たないと、膣内が酸性に保たれないため、殺菌作用が低下し、さらに微生物が繁殖しやすくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
正常なおりもの
おりものから体の変化を知るためには、正常なおりものの状態を知っておくことが大切です。以下の4つの観点から、正常なおりものの特徴を確認していきましょう。
色
- 基本:無色(透明)から白色
- 乾燥時:薄い黄色は正常
- 生理前後:赤色、褐色、茶色の可能性あり
性状(粘り気)
生理直後〜排卵日
サラサラとした粘液(尿よりも少しトロッとした程度)
排卵後〜生理前
粘り気の強いドロドロとした状態(卵の白身のような粘り気)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
生理直後 → | 排卵期 → | 排卵後 → | 生理前 |
におい
正常な状態
- 甘酸っぱい香り(ヨーグルトに似た香り)
- デーデルライン桿菌による乳酸の影響
※体外に排出されてから時間が経過すると、細菌の影響で不快な臭いに変化することがあります。
量
正常範囲の目安
- 下着の取替えやパンティーライナーで対応可能な量:正常
- 生理用ナプキンが必要な量:要注意
- 一般的な量:1ml〜3ml程度
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
生理直後 → | 排卵期 → | 排卵後 → | 生理前 |
重要ポイント
自分のおりものを日々観察し、自分の正常なおりものの状態を把握しておくことが最も大切です。
効果的な観察方法
- トイレ後の拭き取り時に確認
- 下着交換時にチェック
- 違和感があれば都度確認
ホルモン変化とおりものの量
おりものの量には個人差があります。その理由の1つとして、ホルモン変化があげられます。具体的には、生理周期、年齢、妊娠です。
生理周期
閉経前までの成人女性であれば、生理周期によっておりものの量は変化します。おりものは、生理直後に最も少なく、排卵日前後にピークとなります。排卵日の後、妊娠しなければおりものの量は徐々に減少し、再び生理前に量が増えます。ただし、排卵日後のおりものはドロッとしているため、排卵日前後よりおりものが多く感じる方もいます。
年齢
10代ではおりものの量が不安定で、多くなったり少なくなったりします。20~30代では最もおりものの量が多く、生理周期に合わせて多くなったり少なくなったりというパターンが安定します。40代頃からはおりものの量が徐々に減少し、閉経後はほとんど分泌されなくなります。
妊娠
妊娠中は感染症を防ぐためにおりものの分泌量が増加します。性行為の後もおりものの分泌量は増加します。これは、精子を乾燥から防ぎ、妊娠を助けるためです。また、女性の体にとっては異物が体内に入ってくるため、排出させようという機能が働くのではないかとも考えられています。
![]() |
![]() |
1ml | 2ml |
(注)上記の画像は実際のおりものではありません。量の目安として、分かりやすいように液体を着色したものです。(個人差はありますが、1ml~3mlのおりものが一般的な量といわれています)
異常なおりものと疑われる病気
おりものの異常は、様々な病気のサインとなることがあります。ここでは、おりものの状態から考えられる病気と、その特徴を詳しく解説します。
おりものの色・性状 | 主な症状 | 疑われる疾患 | 受診の目安 |
---|---|---|---|
白色(ヨーグルト状)
|
|
カンジタ膣炎 | 症状が1週間以上続く場合 |
黄色・緑色
|
|
|
すぐに受診が必要 |
赤色・褐色
|
|
|
すぐに受診が必要 |
早期発見のためのポイント
要注意サイン
- いつもと違う色や臭いの変化
- 量の急激な増加
- 出血を伴う場合
- 強いかゆみや痛み
対応方法
- 症状をメモやカレンダーに記録
- 清潔を保ち経過観察
- 症状が続く場合は受診
- 急激な症状は早めに受診
特に注意が必要なカンジタ膣炎について
カンジタ膣炎は最も一般的な膣感染症の一つです。以下の特徴に注意が必要です:
主な症状
- 白色のヨーグルト状のおりもの
- 強いかゆみ
- 外陰部の腫れや痛み
- 性交痛
なりやすい条件
- 抗生物質の使用後
- ストレスや疲労
- 妊娠中
- 糖尿病がある場合
セルフチェックリスト
以下の症状がないかチェックしてください:
その他、膣内に異物(タンポンの取り忘れ、ペッサリーなど)がある場合には、細菌が繁殖しておりものから悪臭がしたり、膿がまざったりすることがあります。また、風邪などで熱があるときや脱水の時には、おりものが濃縮し、においがきつくなることがあります。
このように、おりものの異常には様々なものがあります。特に頻度が高く、再発も多いために悩んでいる女性が多いものは、カンジタ膣炎です。カンジタ膣炎は、誰もが皮膚や腸などに持っているカンジタ菌(常在菌)が、膣の中で異常繁殖したものです。通常、膣内は酸性に保たれているため、カンジタ菌が膣内に侵入しても繁殖することはありませんが、抗生物質の使用(例えば、何らかの細菌に感染して熱が出た時に抗生物質を飲むと、熱の原因となっている細菌を殺すと同時にデーデルライン桿菌も殺してしまうことがあります)、糖尿病、疲労やストレスなどによって膣の中の環境が乱れると、カンジタ菌が増殖し、かゆみや痛みが出たり、おりものが白くなったりします。
おりものの異常に対して婦人科で行われる検査
おりものの異常を放置していると、症状の悪化や不妊の原因になるため、婦人科の受診をおすすめします。ここでは、実際の検査の流れと内容について詳しく解説します。
検査の基本的な流れ
問診
- 症状の経過
- 生理の周期
- 既往歴
- 生活習慣
基本検査
内診
医師が指を使って子宮や卵巣の状態を確認します。
エコー検査
超音波で内部の状態を視覚的に確認します。
必要に応じた専門検査
検査種類 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
細胞診 | 子宮頸部から細胞を採取 | がんの検査 |
培養検査 | おりものを採取して培養 | 感染症の特定 |
血液検査 | 採血による各種検査 | 全身状態の確認 |
検査を受ける際の注意点
検査前の準備
- 生理中は避ける
- 前日から性行為を控える
- 検査当日は膣内を洗浄しない
- 下着は履き替えを持参
検査のメリット
- 早期発見・早期治療が可能
- 正確な原因特定
- 適切な治療方法の選択
- 合併症の予防
婦人科検査に不安を感じる方へ
婦人科検査は女性専門の医療機関で、女性医師を選択することも可能です。初めての方でも安心して受診できる環境が整っています。気になる症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
自分でできるおりもの対策
異常とまでは言えないけれど、おりもののにおいやベタツキが気になる場合には、自分でできる対策があります。ここでは、日常的なケアの方法から具体的な対処法までご紹介します。
1. デリケートゾーンの清潔管理
基本的な清潔ケア
デリケートゾーンを清潔に保つことが大切です。おりものから漂う悪臭の主な原因は細菌の繁殖です。膣から排出されたおりものが、長時間、デリケートゾーンや下着に付着していると、細菌が増殖します。
朝のケア手順
- ぬるま湯でやさしく洗い流す
- 清潔な下着に交換する
- 必要に応じておりものシートを使用(量が多い時)
夜のケア手順
- ぬるま湯で優しく洗浄(石鹸は外陰部のみ使用)
- 前から後ろへ一方向に拭く
- 水分をしっかり拭き取る
※過度な洗浄は逆効果です。特に膣の中まで洗ってしまうと、膣内環境を守っているデーデルライン桿菌まで洗い流してしまい、感染しやすくなってしまいます。
2. 快適な環境づくり
デリケートゾーンを高温多湿にしないことが大切です。
下着選びのポイント
- 素材:通気性の良い綿素材を選ぶ
- サイズ:きつすぎない、適度なフィット感のもの
- 管理:こまめな交換と清潔な保管
日常生活での注意点
- 入浴後はデリケートゾーンをよく乾かす
- 下着やおりものシートが汚れたら、すぐに交換する
- 蒸れやすい服装は避ける
3. 体調管理と免疫力向上
感染症を防ぐためには、免疫力を上げることが重要です。以下の4つのポイントを意識した生活を心がけましょう:
運動
適度な運動で血行を促進
睡眠
質の高い睡眠の確保
ストレス管理
ストレスを溜めない工夫
バランス食
栄養バランスの良い食事
4. セルフチェックの習慣化
毎日のケアと併せて、定期的なセルフチェックを行うことをお勧めします。
チェックするタイミング
- 入浴時やトイレの後
- 下着を交換する時
- 違和感を感じた時
チェックポイント
- おりものの色の変化
- におい
- 粘り気の程度
- かゆみや痛みの有無
これらの対策を継続的に実施することで、おりものの悩みや不快感を予防・改善することができます。ただし、気になる症状が続く場合や悪化する場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
おりものの異常に対する治療方法と薬剤選択
おりものの異常に対する治療は、原因となる病気によって異なります。ここでは主な治療方法と、処方薬・市販薬の選び方について詳しく解説します。
病気別の主な治療方法
症状・病気 | 治療方法 | 治療期間 | 治療の特徴 |
---|---|---|---|
カンジタ症 |
|
1〜2週間 | 再発しやすいため、生活改善も重要 |
トリコモナス症 |
|
1〜2週間 | パートナーの同時治療が必要 |
細菌性膣症 |
|
5〜7日間 | 膣内環境の改善が重要 |
市販薬の選び方と使用上の注意
主な市販薬の種類
1. 膣カンジタ治療薬
- クリーム・軟膏タイプ
- 膣錠タイプ
- セット品(外用薬+膣錠)
※第一類医薬品のため、以下の情報を薬剤師が必ず確認・説明します:
- 初めての症状かどうか(初発の場合は受診が必要)
- 医師の診断を受けたことがあるか
- 妊娠・授乳の有無
- 他の薬剤の使用状況
- アレルギー歴
- 正しい使用方法と注意点
2. デリケートゾーンケア用品
- 洗浄料
- 保湿クリーム
- パンティライナー
使用上の注意点
- 初めて症状が出た場合は必ず受診
- 説明書をよく読んで正しく使用
- 決められた期間は治療を継続
- 症状が改善しない場合は受診
- 妊娠中・授乳中は医師に相談
処方薬と市販薬の違い
処方薬の特徴
- 医師の診断に基づく処方
- 症状に合わせた選択が可能
- より強い薬効が期待できる
- 保険適用が可能
市販薬の特徴
- すぐに入手可能
- 比較的軽症な場合に適する
- 再発時の対応に便利
- 種類が限られる
女性のためのデリケートゾーン専用サプリメント
カンジタ(女性)完治セット
カンジタ膣炎の市販薬は全て第1類医薬品であるため、薬剤師による説明を聞かないと購入することができません。デリケートゾーンの話であるため、店頭で薬剤師と話をすることに抵抗がある方も多いのではないでしょうか。
そこでおすすめなのがカンジタ(女性)完治セットです。こちらは、ファンガクリアとフェミプロバイオの2種類のサプリメントがセットになったもので、カンジタ膣炎の完治を目指すことができます。ファンガクリアは、カンジタ菌の増殖を抑え、免疫力を上げることでカンジタ膣炎を克服することが期待できます。フェミプロバイオは、デーデルライン桿菌を育て、膣内の環境を酸性に保つことでカンジタ菌に感染しにくくし、再発を防止することができます。カンジタ膣炎の完治には、カンジタ菌をやっつけるだけではなく、カンジタ菌が繁殖しにくい環境を整えることも重要なため、この2種類のサプリメントを使うことが効果的です。
フェミプロバイオ
カンジタ膣炎以外にも、萎縮性膣炎(老人性膣炎)などホルモンのバランスの乱れや膣の自浄作用がうまく働かなくなったことによっておりものに気になる症状が出ている方へおすすめなのがフェミプロバイオです。
女性ホルモンの分泌低下などによって膣の粘膜が正常に機能しなくなると、善玉菌であるデーデルライン桿菌が膣内で生育しにくくなります。すると、体にとって有害な微生物が膣内で繁殖し、異常なおりものが生じるとされています。このため、不足しているデーデルライン桿菌をフェミプロバイオで体の外から補い、膣内の乳酸菌を増やすことで、気になるおりものの症状を改善することが期待できます。
デリケチェック
『おりものの異常に対して婦人科で行われる検査』では、婦人科で行われる基本検査と疑われる病気別の検査について紹介しましたが、婦人科では特殊な検査が行われるため、怖い、敷居が高い、と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。また、本当に病気なのか分からないのに、いきなり婦人科の検査を受けるのは抵抗があるという方もいらっしゃると思います。
そんな方におすすめなのが、デリケチェックです。デリケチェックは、膣内のPH(酸アルカリ度)を判定する検査キットで、病院に行く必要があるかどうかをご自分で調べることができます(全ての婦人科系疾患を判定できる訳ではありません)。まずは、このデリケチェックを使って、婦人科に行くかどうかを決めてみてはいかがでしょうか。
よくある症状と対処Q&A
ここまで、おりものについての基礎知識から対処法まで詳しく解説してきましたが、実際の生活では様々な疑問や不安が出てくるかもしれません。ここでは、よくある質問とその対応方法についてまとめています。
Q1: おりものの量が急に増えた場合は?
A1: 排卵期での増加は正常ですが、以下の症状を伴う場合は注意が必要です:
- 強い痒みや不快感がある
- 通常と異なる色や臭いがある
- 腹痛や発熱を伴う
これらの症状がある場合は、婦人科の受診をご検討ください。
Q2: デリケートゾーンのケアで気をつけることは?
A2: 以下のポイントを意識したケアが重要です:
- 石鹸の使用は外陰部のみにとどめる
- ゴシゴシ洗わず、優しく洗い流す
- 清潔な下着に適宜交換する
- 通気性の良い綿素材の下着を選ぶ
Q3: どんな時に婦人科を受診すべき?
A3: 以下のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします:
- おりものの色が黄色や緑色に変化
- 強い悪臭がある
- 出血や痛みを伴う
- 1週間以上症状が続く
まとめ
おりものの異常を発見するためには、普段の自分自身のおりものの状態を把握しておくことが大切です。そして、いつもと違うおりものが出た場合には、症状が悪化する前に婦人科を受診する必要があります。
異常とまでは言えないおりものの臭いや不快感を防ぐためは、デリケートゾーンを清潔に保ち、高温多湿になることを避けるとよいでしょう。また、カンジタ膣炎や膣内の環境の乱れによって生じるおりものの症状には、サプリメントがおすすめです。
おりもの対策は自分でできることもたくさんあります。おりものシートやサプリメントをうまく活用して、自分に合った対策を継続することが重要です。
この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。